第119話風岡春奈の分析と失敗 平井先生のおにぎり?

私、風岡春奈としては、祐君と二人で平岡先生の家に伺いたかった。

そのほうが、「祐君を愛でられる、独占タイム」が増えるのだから。

しかし、「さあ、出発しましょう!」と言う時に、祐君が予想外のことを言い出した。


「あの、両隣の吉村純子さんと菊池真由美という人が手伝ってくれると」

「二人とも、文学には詳しいので、一緒に」


その後、祐君が直接、平井先生からの許可を得た(得てしまった・・・)のだから、仕方がない。(先生、断って!と思ったけれど、今さらだ)


・・・でも、私は祐君の「ずっとのお姉さん位置」でいたいので、せっかくだから純子さんと真由美さんを「しっかり分析」することにした。(根拠のない、プチ小姑?そうかも)


でも、祐君は、助手席だ。(これは譲れない)

それでも、チラチラと二人を観察。

「純子さんは、おっとり、どっしりタイプ、美人で品がいい」

「真由美さんは、ハキハキとした感じ、彼女もきれい」


おそらく祐君も、「両方から声をかけられている」と理解した。

「両隣だし、引っ越し早々だろうから、人間関係もあるよね」

「祐君も、これは気苦労かな」

「・・・少し、純子さんが、リードしている感もある」

「ねえ、祐君・・・の声かけが、しっとりしている」

「そのたびに、真由美さんの目が泳ぐし」


しかし、私は運転手。

あまり後部座席ばかり見ていられない。

それと、祐君の蒼い顔も気になった。

「体調が悪いのかな」とは感じた。

でも、今さら、先生の家に行かないなんてできない。

(この時点で、祐君の空腹をすっかり忘れていた・・・ごめんなさい!)


先生の家がある下北沢に近くなったところで、祐君が切実な声。

「あの・・・ごめんなさい」

「この先にコンビニあります?」


私は、本当に焦った、祐君にも悪いと思った)

「ごめん、ない」

「約束していたよね」

(祐君のおなかより、女の子二人の分析に気を取られてしまった)


祐君は、冷ややかな顔と声。

「ごめんなさい、わかりました」


後部座席では、純子さんと真由美さんが、ムッとした顔で私を見ている。


そうこうしている間に、先生の家に着いてしまった。

私は、車を降りるなり、玄関を出て来た平井先生に向かってダッシュ。

「あの・・・事情があって・・・ごめんなさい・・・祐君がおなかが減って・・・」


平井先生は、「はぁ・・・」と笑い、祐君を手招き。


「ねえ、祐君、鮭のおにぎりと、葉唐辛子のおにぎりでもいい?」


祐君は「え?どうして、それを?」と驚いた顔になっている。


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