第300話予定が途切れず、祐の顏は浮かない

父、森田哲夫は、話題を変えた。

「祐、一度、京都の本家に顏を出して来い」

「話があるらしい」


父哲夫が、少し笑ったので、祐は不安になった。

「面倒なこと?」

「まだ、都内でもバイトがあるから」


父哲夫は、素っ気ない。

「行けばわかる、葵祭りの頃でもいいかな」

祐は手帳を取り出して確認。

「秋山先生の講演の後、平井先生のバイトともかぶらない」

「佐々木先生の社会人講座とも・・・問題ない」


少しもたつく祐は無視、父哲夫が女性たちにも声をかけた。

「皆さんもどうですか?西陣の古い屋敷ですが」


女性陣は、最初、ソワソワ。

純子

「マジですか・・・恐れ多いような」

真由美

「ありがたいけど・・・敷居が高いかな」

田中朱里

「歴史と格式のお屋敷・・・震えて来ます」

愛奈が空気を変えた。

「一度、お泊りしたことあるよ」

「確かに、すごいお屋敷」

「料亭もやっていて、お料理は最高、和菓子も天国の味」


純子

「はい、よろしくお願いします」

真由美

「同じく」

田中朱里

「超名門のお屋敷、楽しみです」


祐は、この空気に抵抗はできなかった。

「まあ。忙しくなるだろうな」と言いながら、頷いた。(本当はシブシブだ)


そんな話がまとまり、祐たちは、森田哲夫事務所を出た。(桜田愛奈、マネージャーの吉田雅子、弁護士寺尾は、打ち合わせ、手続きがあるので、残った)


祐は、少し冴えない顔。

純子が気になった。

「行きたくないの?」

祐は、素直に理由を言った。

「次から次だね。途切れない」

真由美

「それだけ、期待されているってこと」

田中朱里も祐を励ます。

「大丈夫だよ、祐君なら」


少し歩いて、メトロの駅。

祐が、女子たちに頭を下げた。

「もっと街を歩きたいけれど・・・ピアノの練習もあるから、ごめん」

「またライブバーで、今度はジュリアでなくて、別の人とらしい」

「マスターから、連絡が入った」


純子が祐の背中をポンと叩いた。

「頭を下げなくていいよ、気にしない」

「練習を聞きに行きます」


真由美と田中朱里も頷いたので、祐はホッとした顔で、メトロに乗り込んだ。


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