第111話夜を徹した現代語訳作業の後、祐は倒れる。

夜を徹した作業となった。

時折、水をほんの少し含むだけ。

珈琲は、半分も飲んでいない。

一旦、仮名序全文を訳し終えたけれど、細部が気に入らず、何度も最初から、やり直す。

各社で出している注釈書をダウンロード出来る限りして読み、首を捻ったり、頷いたり、また訳し直してみたり。

印刷をして、また読み直して、赤ボールペンで修整、校正を繰り返す。

それも何度やったか、不明。

少なくとも紙ベースで、100枚以上になっている。


「これで・・・もう・・・限界・・・」

祐自身、「直しようがない」、と思う「現代語訳」が出来たのは、午前6時少し前。

窓から入る光は明るい。


ようやく椅子から立ちあがり、トイレで用を足すまでは、まだ、まともだった。

ベッドを見た時に、突然、頭がクラクラとなった。


「あれ・・・部屋が、回っている」

と思った直後だった。


祐の足がもつれた。

どうにもバランスは取れなかった。

そのまま、後ろ向きに倒れた。


「ガツン」の音と、衝撃は感じた。

しかし、そのまま、意識が遠くなる感じ。

起き上がりたくても、目が回って、無理。

吐き気もする。

でも、もどしたくないから、歯をくいしばって我慢する。


眩暈が強過ぎる。

立ち上がっても、また転びそうな気がして仕方がない。


祐は、そのまま気を失ってしまった。

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