第387話本番直前③5分前~祐はステージへ

講演5分前になりました。

私、朱里は祐君の顏から目が離せません。

(もちろん、女子たちも)


突然、楽屋のほうから、中村雅代先生が登場して来ました。

そのまま、祐君に御菓子・・・干菓子を手のひらの上に。


祐君は、そのまま口に入れて、にっこり。

小さな声で「ありがとうございます」とも。

(いいなあ、師弟関係って)


干菓子の甘味が口の中に広がったのかな、祐君は目がパッチリと開きました。

(・・・これ・・・ライブバーで演奏する直前の顏に!)


司会者の出版社佐伯楓さんのアナウンスが始まりました。

「講演5分前になりました」

「皆様、お席にお座りください」

あちこちでザワザワしていた人たちが、一斉に自分の席に戻ります。(満員で指定席なので)


2分ぐらい間をおいて、いよいよ講演開始のアナウンスです。

「皆様、長らくお待たせいたしました」

「ただいまより、源氏物語、若菜上について 講演を開始いたします」

「尚、お手元の資料等は、講演に集中していただくため、出来る限りご自宅に戻られてから、お読みになるようお願いいたします」(紙が、カサカサ音を立てると、講演を聞くうえで、邪魔になるから)


「また、本日の講演者は、期待の新人、森田祐君です」

「森田祐君のプロフィールにつきましては、ステージの右横のパネルに表示してありますので、ご覧願います」(大型スクリーンのようなもの)


「今回は、秋山先生の突然のお怪我で、秋山先生のご指名での代読となります」

(秋山康先生ご夫妻にスポットライトがあてられ、秋山先生は軽く手を振っています)


司会者佐伯楓さんが、大きく深呼吸。

「それでは、森田祐君が登壇いたします」

「皆様、拍手をお願いいたします」


大きな拍手の中、祐君はステージの中央に、スタスタと歩いて行きます。


なんか・・・胸が痛いです。

何回も練習を聞いたけれど・・・涙が出て来ました。

祐君・・・がんばって!(もう、それしかないので)

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