第103話平井恵子③

平井恵子は、話をまとめようと考えた。

「それでね、祐君」


祐は、まだ困惑顔で「はい」とだけ。


平井恵子

「作業場所は、私の下北沢の家で」

「そこで、内容については、もう少し具体的な話をします」

「作業日は毎週、土曜日一日」

「もちろん、バイト代とお昼は出します」


祐は、再び「はい」と頷くだけ。


風岡春奈が祐の顔を見た。

「毎週、土曜日でいいかな」

「私、調布に住んでいるの」

「車で祐君を乗せて、先生の家に」


祐としては、「電車で」と言いたかった。

しかし、風岡春奈の「目の圧力」が強い。

「わかりました、当面はお願いします」と、答えた。


「これで終わりかな、今日は」と祐がホッとしていると、風岡春奈。

「ねえ、祐君、先生の本も読んでおいてね」と、平井恵子著作の古今和歌集関連の本を3冊テーブルの上に置く。


「わかりました、読ませていただきます」

祐は、そう言うしかない。

これで、土曜日も予定が埋まり、秋山先生の日曜日もまた重圧を感じるが、どうにもならない。


平井恵子は、そこまで話して、すんなりと帰った。

ただ、風岡春奈は、何の理由かわからない。

まだ、「祐君と話をしたい」と言い、残っている。

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