第156話祐君に恩師吉村里奈先生から、「依頼」

懸命に「講演用原稿」をチェックする祐君のスマホが鳴った。

祐君はスマホを手に取った

祐君は、私、純子と真由美さんに「奈良でお世話になった吉村里奈先生」と断ってから電話に出た。(そんなに気にせんでもいいと思うけど、祐君らしい、律儀な子や)


ただ、真由美さんは「意味不明なので」、祐君は「ちょっとトラブルがあって、祐君は、去年の夏に奈良にいた、その時にお世話になったらしい旨」を言う。(真由美さんは、初耳なので、まだ意味不明らしかった)


ただ、祐君の声しか聞こえない。


祐君

「はい・・・無事です」

「その時にはありがとうございました」(普通の声、何か引いている感もある)


祐君

「あ・・・そうですね、大変ですね」

「がんばってください」(逃げたがっている、電話を切りたいような困った顔)


祐君

「え・・・マジ・・・ですか?」

「あの・・・無理・・・」(何か頼まれた?断るよね、今が大変だもの)


祐君

「うーん・・・」

「どうしても?」

「大宰府と明日香村?」

「いつ頃?」

「・・・6月?」

「僕は何を?」

「あ・・・うん・・・」

「6月なら、できる・・・かなあ・・・」

「でも、他の先約バイトが重くて」

「どうしても?」


祐君は、少し間を置いた。

「わかりました、細かい日程は、また相談しましょう」


・・・そこで、電話を終えた。


祐君は、ドッと疲れた顔。

私たちに、説明を始めた。

「去年の夏に奈良に避難したんです」(苦し気な顔、可哀相なほど・・・言いたくない、嫌な話や・・・でも真由美さんは、知らんから)

「純子さんには説明しましたけど、ストーカーみたいな女の子がいて、胃潰瘍になって」(母情報では、酷く痩せていたらしい)(真由美さんは、マジ?と祐君を注目しとる)

「その時に、純子さんのご実家の和菓子屋さんで、お父様とお母様にお世話になって」(私は知らなかったと・・・真由美さんにボソッと言った)


「で、吉村里奈先生は、母の教え子で万葉集専門」

「奈良で一人で話し相手もいないので、その相手も兼ねて、万葉集に縁がある場所を案内してもらいました」(・・・そういうことだったのか・・・それで奈良に詳しい、ようわかった)(真由美さんは、祐君の話に集中、身を乗り出している・・・近過ぎや!あかんよ!)

「それで、今の電話は、明日香村と大宰府の万葉集に縁がある場所で写真を撮ったり、何か文を書く話、それに付き合ってとのこと」(え?奈良と大宰府?ほー・・・)(私と真由美さんは、かまわん、大歓迎やと思うけど)



「平井先生と、秋山先生の仕事もあるので、悩むところですが」

「お世話になった人なので、簡単には断れなくて」(ふむ・・・確かに今の仕事は大変過ぎる・・・しかし、確かに断れんね・・・義理もあるやろから)


私と、真由美さんは、顔を見合わせた。(同じ気持ちが、すぐにわかった)

「実家に帰るようなものだよ」

「協力させて」

真由美さん

「任せて、心配不要」

「親に連絡します」


祐君は、頭を私たちに下げて、ポツリ。

「写真だけにします」(文は何故か、書きたくないようだ)

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