第22話祐は本の聖地 神保町へ

祐が目覚めたのは午前8時。

珈琲を飲みながら、いろいろと考える。

「昨日は引っ越しの挨拶の意味があるし、仕方ないかな、叔母さんや叔父さん、恵美ちゃん・・・美咲さんは意外だけど」

「純子さんと甘酒も、あれしか選択肢がなかった」

「でも、自分一人で東京の街を歩きたい」

「あまり人に気をつかいたくない」


祐が決めた「街歩きの場所」は、神保町。

本好きの祐にとって。神保町は「どうしても歩かなければならない聖地」だった。


アパートを出たのは午前9時半過ぎ。

千歳烏山駅で都営線直通に乗る。

座れなかったけれど、車窓から外を見るのが楽しい。

「工場ばかりの静岡の田舎とは違う、住宅が多い」

「住宅ごとにいろんな生活と人生があるのかな」

そんなことを考えていると、笹塚を過ぎ地下鉄に入る。


新宿を過ぎたところで、スマホにメッセージが入った。

恵美からだった。

「今はどこ?アパートに行こうかなって」

祐は苦笑。

「都営新宿線の中、行先は神保町、本を探す」

恵美

「・・・私は無理・・・頭が痛くなる」

「でも、アパートに、いつか行っていい?」

祐の答えは「うん」と単純。

恵美からは「ありがとう」の花柄のスタンプと「ケーキ持って行くね」と「美咲も連れて行くね」の連続。

祐は、また押された。

「お待ちしています」のシンプルな返信。


そんなやり取りをしていると、都営新宿線は神保町に到着。

祐はスマホを鞄に入れて(美咲からのメッセージには全く気がついていない)、駅のホームに、改札を出て階段をのぼり、地上に出た。

そして祐は感じた。

「ここが本の聖地、学問の聖地…神保町」

身体がブルッと震えたのは、3月末のまだ肌寒い風ではない、祐自身がそう思っている。


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