第44話祐は源氏物語を少し考える
祐が目覚めたのは、午前11時過ぎ。
「寝てしまった」
ベッドから身体を起こすと、少しだけ眩暈。
でも、昨日ほどではないので、ホッとする。
食欲は、全くない。
冷蔵庫にも、何もない。
窓から外を見ると、寒そうな風が吹いている。
「下手に出かけて、また風邪になっても」と思う。
祐は、「珈琲を」と思った。
しかし、何となく胃が痛いので諦めた。
せめて、牛乳でも、と思うけれど、無いものは無いし、どうにもならない。
仕方ないので、水をコップ半分飲み、「昼食」とした。
椅子に座り、昨日神保町で買った「源氏物語湖月抄」を広げる。
「・・・マジに難しい・・・」
「よく読めば面白いかもしれないけれど、時間がかかる」
祐は、結局、「源氏物語湖月抄」を後回しにすることにして、別の本を探す。
目に入ったのは、紫式部日記の文庫本。
五節の舞の部分を開いた。
「舞姫にお付きの女房達の衣装の記述が、丁寧かな」
「記述と言うより、記録の意図で書いたと思う」
「誰が、どんな身分で、どんな出自で、どの色で、どういう意図を持った模様で」
「いかに他者に配慮しているか、それも重要」
「分を越えた衣装を着るとか、場を壊せば、宮廷社会、特に女房たちから嗤いもの」
「それだから、衣装や、その場面については、後々のために必ず記録しておかなければならない」
「日記は、そのための、必需品でもある」
祐の思考は、「紫式部日記の女房の衣装」から、「女房たちの嗤いもの」に飛んだ。
「桐壺の巻は、女性による女性への苛めの記録でもある」
「その分を越えて、帝に愛されてしまった桐壺の更衣」
「玄宗皇帝と楊貴妃に話まで持ち出され、世の乱れの原因と、噂され苛められ」
「現代の女性でも、そうなのかな」
「自分より、劣る、と馬鹿にしていた女性に、突然彼氏を奪われたとなると」
祐がそんな思考にはまっていると、アパートのチャイムが鳴った。
インタフォンから、「純子です」と聞こえて来た。
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