第124話平井恵子の家にて(4)

その後、役割の再確認、作業の日程などの相談となった。

祐が和歌の現代語訳、春奈が語釈と派生歌、純子が校正、真由美が写真、挿絵などが基本。

平井恵子は、最終点検。

作業日については、二週間に一度、土曜日と決まった。

バイト料は、時給換算すれば、他のコンビニバイトより、かなり高額だった。


平井恵子は笑顔。

「とにかく魅力がある、現代語訳にしたいの」

「日本文化の華を表現するのに、ケチケチしたくないのよ」


純子と真由美、春奈は、ホクホク顔になっているけれど、祐は軽く頭を下げただけ(あまり表情を変えず)、そのまま平井恵子の家を辞した。

尚。春奈は平井恵子の家に残ったので、祐と純子、真由美の三人で帰る。


下北沢を歩きながら、祐は二人に謝る。

「急なことで無理を言ってごめんなさい」

純子は、首を横に振る。

「何を言っているの?私たちが手伝いたいとお願いしたの、だから当然なの」

真由美も、続く。

「すごく面白そうな仕事、自分も成長すると思うの」

「だから、祐君には感謝しているの」

祐は、少し表情を崩す。

「助かります、ホッとしました」

純子は、下北沢の商店街をあちこち見る。

「面白そうな店が多いね、さすが下北沢」

真由美もキョロキョロ。

「博多と違うね、何だろう・・・この雰囲気楽しそう」


祐は下北沢の街は見ない。

「早い時期に京都に行きたい」

純子が祐の気持ちを察した。

「古今和歌集は京都だから?」

「私、詳しいから案内するよ」

「奈良より京都で遊んでいた、高校生の頃」

真由美も、負けてはいない。

「写真も撮れるかな、純子さん、スポット教えて」


その純子と真由美を祐が制した。

「古今集と関連のある場所」

「もう一度、読み直さないと」


純子と真由美は、「はっ!」と顔を引き締めた。

純子

「そうよね、仕事だ」

真由美

「うん、適当に撮ればいい、そんなことでは」


祐は、また、話題を変えた。

「その前に、入学式と履修登録だよ」

純子はプッと笑う。

「そうよね、一緒にお願いします」


ただ、真由美は別の大学。

実に口惜しそうな顔になっている。


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