第266話祐は写真選びで苦戦 築地の料亭へ
祐は、少し疲れていた。
数十万枚の写真から、古今和歌集1,100首あまりの歌の写真を選ぶ、それも予備を含めて3枚から4枚となると、かなり神経も目も使う。
森田哲夫や自分が撮った写真を使う以上は、自分が選ぶべき、と思う。
写真に関しては平井先生も含めて、女性たちは素人なのだから。
十首の歌の写真を選んだ時に、純子と真由美が入って来た。
「ごめんね」と謝られたけれど、どうにもならないので、笑うだけ。
とりあえず第一巻を仕上げるとか、一首ごとに地道に焦ら選ぶしかない、と思う。
選ぶ作業は、純子や真由美には、酷な話と思う。
祐が選んだ写真を、評価してもらうだけになる。
自分一人で写真を選ぶ作業は、苦しいけれど、弱音は吐きたくない。
ただ、今日の時点では、選びきれないのでデータを持ち帰ることにした。
森田哲夫事務所を出ようとする時、従妹の恵美からメッセージが入った。
恵美
「祐ちゃん、今、どこ?」
祐は素直に返した。
「親父の東京事務所、だから神田」
「純子さんと真由美さんも一緒」
恵美は途端に、音声通話に切り替えた。
「ねえ、純子さんか、真由美さんに代わって!」
祐は意味不明
「どういうこと?」
恵美は、その祐が面倒。
「いいの、祐ちゃんは!」
恵美の大声が純子と真由美にも「漏れて」聞こえていたようだ。
純子が笑いながら、祐からスマホを「略奪」する。
「あはは、純子です、今、祐君、拗ねています」
「可愛い従妹にフラれたって」
恵美は「キャハハ!」と笑いながら、用件に移る。
「だって、祐ちゃん、一歩も二歩も遅れるしね」
「あ!春の新作メニューできたの、食べに来て!」
「親父が威張っているから」(築地で料亭をやっている)
純子は、笑い出す。
「それ、うちの親父と、全く同じ」
「職人って、新作を作ると、もう威張るの、すごいだろうって」
純子は気をつかって真由美にも「祐の」スマホを渡す。
真由美も声が明るい。
「はーい!真由美です!」
「恵美ちゃん、おひさ!」
「森田哲夫大先生の写真集貰った、ありがとう!」
恵美は「アハハ!」と笑う。
「うんうん、どうぞどうぞ!」
「その中に、祐君の写真が何枚かあるかなあ・・・」
「教えてあげる、本人は言わないよ、変にカタブツなの」
スマホは祐にもどらずに、また純子に。
「じゃあ、ここから恵美ちゃんの店に」
「楽しみだなあ」
恵美
「うん、鬼母も首長くして・・・あ・・・鬼母って言ったら怒った」
「ごめん、祐ちゃんに代わって!」
ようやくスマホが祐に戻った。
「お久しぶりです、祐です」
「お招きありがとうございます、今から伺います」
叔母美智代(恵美の母)
「ごめんね、明るいだけのアホ娘で」
「女性としての、たしなみのカケラもない」
祐は、プッと笑う。
「後で、締めてもいい?」
叔母美智代は、大笑い。
「あーーー!それお願い!もうね、恵美って食べ過ぎしているくせに、水着が入らないとか、ほんと、見せられない」
祐は笑顔が続く。
「わかりました、では、請け負います」
そんな漫才を終えて、祐の一行は、築地の料亭に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます