第16話美咲は祐のブログを読んでいた

さて、美咲には、親友の恵美も知らない、当の祐も知らない「祐との秘密」があった。

「このことを知れば、祐さんはどれくらい驚くのか」と思うけれど、今は言いたくない。

できれば「二人きりの時」に「そっと打ち明けたい」、そんな秘密である。


その美咲が「祐との秘密」を知ったのは、約2か月前のファミレスだった。

恵美が自慢げに祐の写真を見せた。

「従兄の祐ちゃん、今度大学生になって東京に来るの」

「ね、メチャイケメン、可愛い」


そこまでは、「うん・・・メチャ可愛い系・・・いい感じ」と美咲も思った程度だった。


しかし、恵美の次の言葉が、美咲の心を激しく揺さぶった。

「お母様の影響で、源氏物語とかすっごく詳しくて・・・どこかの小説投稿サイトにブログみたいなのを載せているって・・・私には興味ないから読まないけどね」

「それでね、笑っちゃうけど、本名で投稿しているって、マジに何を考えているのやら・・・」


美咲は、思わず勢い込んで(少し噛みながら)恵美に聞き返す。

「その・・えっと・・・祐さんの名字って・・・何?」


恵美は、美咲に笑いながら即答。

「森田祐よ・・・ねえ・・・狙うの?それなら紹介するよ」


美咲は、本当に驚いた。

「マジ?・・・あの・・・森田祐さん?憧れの名文・・・私、大ファン・・・何度も質問のコメント書いて、丁寧に答えてくれて、・・・テストの時に役立って」

「無理とは思ったけれど、一度逢えればなあとずっと思っていて・・・その人に逢えるの?」


美咲は、恵美に思わず手を合わせた。

「うん!紹介して!」

それでも不安が有ったので「念」を押した。

「私以外の子に写真を見せたり、紹介したら、友達の縁を切るよ」


恵美は、そんな必死な美咲を笑った。

「美咲のイケメン好き!しょうがないなあ」

「愛しの祐ちゃん、恥ずかしがり屋だけど」

「紹介だけはしてあげる」

「でも、その後は美咲の努力次第」

「何しろ祐ちゃん、バレンタインデーは大変らしいよ」


そんな話を思い出しながら、美咲は祐の手を握る。

「ほんとに・・・あの森田祐様」

「今は独占・・・これも縁?」


その祐は、「どうしていいのかわからないらしい」、顔を赤くしたまま。

美咲には、そんな祐が愛おしい、祐のきれいな指を楽しみ始めている。

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