第167話伊東の別荘にて⑤夕食

私、恵美は、食堂に入って、メチャ焦った。

祐ちゃんと芳江叔母さんが、食事の準備を始めているのだから。

私だって、日本橋の料亭の娘、少々の「心得」はある。

(他の人に見せつけたかった)


・・・でも・・・祐ちゃんも、見ていて料理は上手だ。

祐ちゃんの刺身包丁の使い方は、親父と比べても、遜色はない。(私は、一瞬で負けを悟った)


だから、煮物に取り掛かった。(これも親父直伝の海鮮鍋だ)

芳江叔母さんが、「はいはい」と、焼き物に回った。(・・・察してもらった・・・ありがたい)


その焼き物の香りが、本当に香ばしい(嗅いでいるだけで、おなかが減った)

純子さんと真由美さんも、実にニコニコと、盛り付け、配膳を手伝ってくれた。(助かった)


芳江叔母さんの言葉で食事が始まった。

「さあ、地魚尽くし、召し上がれ」(華のような笑顔、女子高生の私から見て、マジ、大人美女・・・将来は、ああなりたい)


祐ちゃんも可愛い笑顔(従兄でなかったら・・・ブチュっとしたい、いや、する!)

「久しぶりに包丁持った」


純子さんも笑顔。(なんか、いい感じ、包み込まれるような優しい・・・オーラがある)

「祐君のお魚のさばき方とか、包丁の、スッ、スッと引く感じ・・・なんかプロみたい」

「だから、こんなに美味しいの?」(・・・私が負けを悟った技術をしっかり見ているし)


祐ちゃん

「・・・親父に仕込まれた、8歳頃から」


芳江叔母さんもニコニコ。

「そうね、祐ちゃんは、料理は上手よ、器用だから」

「・・・瞳ちゃんは・・・まあ・・・うん」


祐ちゃんは、プッと笑う。

「姉貴は、サプリが多い、人間の食事とは思えない」(・・・言えないでしょ?本人の前で)


真由美さんも刺身に夢中。(おいおい・・・私の鍋は?)(でも、真由美さんも超美少女、ハキハキと、いい感じ)

「味が甘い、濃い!」

「祐君の腕もいい、箸が止まらない」


鍋も評判が良かった。(お世辞?でも祐ちゃんは食べていた)

芳江叔母さん

「この品のいい味付けは、恵美ちゃんのお父さんの味」

「すっきりとして、滋味がある、江戸前の感じね」


祐ちゃん

「出汁の取り方がいいね、今度教わりに行くかな」(・・・私が料理したのに?)


純子さんも、真由美さんもモリモリと食べる。(遠慮されない方が好き)

純子さんが、真由美さんにウィンク。(え・・・何を言うの?)

「私たちも、ご一緒します。教わりたいなあと」


私も、応えるしかない。

「親父に、申しつけておきます」(偉そうかな・・・ま、いいか)


芳江叔母さんの焼き魚(ブリ)も絶品、後はエビフライ、アジフライ、いろんな天ぷらも絶品。


心配されていた祐ちゃんも、かなり食べていた。(魚が恋しくなったのかな、やはり静岡育ちだ)

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