第367話伊東合宿⑪ジュリアも来た。

なんだかんだと静岡県東部の観光地論議が盛り上がっていると、ジュリアが入って来た。

祐は、姉瞳に腕を組まれていたけれど、難なくふりほどき、ジュリアの前に走った。

(女子たちは、うっ!と、祐の珍しい俊敏さに目を見張った)


祐は、声が上ずった。(顏も赤い)

「連絡してくれれば、お迎えに行ったのに、でも、来てくれてありがとう」

(ジュリアは、清楚な花柄のワンピース、いかにも上品な金髪のお姫様)


「だって、祐を驚かせたかったもの」

・・・と、そのまま祐の小顔を、豊かな胸にムギュッとめりこませる。


女子たちは、様々な反応を示した。

純子「恒例行事、もう見慣れた。あれがないと、不安」

真由美「私も、もう少しあればなあ・・・一度やってみたい」

朱里「私は、ギリギリ、できるかな、今度やってみる」

春奈「私も、ジュリアにして欲しい、お願いするかな」

瞳「私の時は、嫌そうな顔をするのに、金髪にはOKなの?」


・・・それはともかく、ジュリアは少し祐の顏を、胸で「楽しんだ」後、解放、女子たちに、ご挨拶。


「遊びに来ました、よろしくね」


(その笑顔の美しいこと・・・日本人女子は、途端に大歓迎)

(ハグをしたり、温泉の話、観光の話でもりあがる)


ようやく一息ついた祐が、提案を出した。

「ジュリアも来たばかり、少し休んでから、また散歩しよう」

姉瞳が反応した。

「ねえ、祐、10分ぐらい歩いたところに、蕎麦の店あったよね」

「いろんな蕎麦を出すお店」

祐も思い出した。

「ああ、蕎麦自体が、地産で美味しくて」

「ワサビも新鮮、これも地産のもの」

「普通の日本蕎麦、蕎麦がきも当然ある」

「蕎麦粉のガレットも出す」

ジュリアの目が輝いた。

「蕎麦粉のガレットか・・・懐かしい」

「ブルターニュの名物だよ、リンゴ酒も」


他の女子たちに、異論はないので、お昼は決まりとなった。



姉瞳とジュリアが、二階の寝室に荷物を置いて、女子たちと盛り上がる中、祐はようやく一人で落ち着いた時間になった。

「どうせ大騒ぎで、すぐに降りて来ない」

「ピアノは、2階まで響くかな」


祐の目に、ギターが見えた。

「ギターを弾こう、たまには」


チューニングをしながら、思いついたのが、ボレロ(ラベルのオーケストラ版で有名)。

独特のリズムを叩いてから。静かにメロディを弾き始める。

音色を変え、ニュアンスを変え、アラブ風に装飾音符を付けたりして楽しむ。

(途中で、芳江が入って来ているのに、気がつかない)

曲のクライマックスの部分で、強く弾いた。(オーケストラ版を意識した)


演奏が終わって、大きな拍手に驚いた。

芳江と、二階から女子たちが(いつのまにか)聴いていたようだ。


芳江(元音大卒のプロのチェリスト)は、笑顔。

「面白いね、ギターでのボレロ、かっこいい、少しスパニッシュにしたの?」

祐も笑顔。

「たまには、面白いかなと」


ジュリアは、ヴァイオリンを持って降りて来た。

「ボレロなんて弾くから、血が騒ぐ」

「何代か前の先祖に、スペインの人がいるの」


祐は、ジュリアの気持ちを察した。

そのまま、カルメンの「幻想曲」の前奏をギターで弾き始めた。

ジュリアは、妖艶にヴァイオリンを奏でる。


女子たちが、聞き惚れるなか、姉瞳は、少々嫉妬。

「日本の実姉より、フランスの義姉が好きなの?」

「アホ祐は、全く態度を変えるし・・・」


ただ、祐とジュリアのデュオは、やはり一曲では終わらない。

そのまま、ビゼーの「アルルの女」に進んでいる。

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