第71話母と古墳の話  え?祐君が親父と?

母は、ますます、私、純子を責めて来た。(こういう時の母は怖い、しつこい)

「ヒントはあげとる、今までの話の中で」


私は、懸命に(けなげに)考えた。

「古墳の近くの田んぼ?」(うー・・・わからん!)


母は、何も言わない。(この沈黙が、メチャ怖い・・足が震えるし)


でも{あっ!}と気がついた。(目からウロコかも!)

「もしかして、古墳って田んぼづくりの残土?」(それでも、オズオズ気味)


「はい、正解」(あーーーホッとした、お腹が減るほど)


「そうやね、古墳の周りって、昔は田んぼばかりや」(自慢げに胸を張る!)


「原野を切り開いて田んぼを作る、当然、残土や木が残る」

「それを使って、盛って古墳みたいなものを作る」

「お墓に入るのは、作業責任者の大王や、当然やな、死んでも責任を取れと)

「その開拓面積が大きい程、より多くのお米が取れる、だから立派な大王やな」


「そういう相関関係があったんやね」

「単なるお墓とか、文化財やないと」

(母はきっと誰かに聞いた話を自慢げに私に言っていると思うけれど、賢い私は、母を立てることにした)


「当たり前や、お墓とか文化財なんて、原野を切り開く重労働に比べれば、些細なことや」(母は、ますます、ノリがいい)


「そうなると、仁徳天皇は、凄かったんやね、あんな大きな古墳で」

(この私の、アワセの上手なこと!うまくいけば、仕送りアップだ!)


「まあ。そうやね、大きな公共事業の結果や」

(このうれしそうな声が、仕送りアップを期待させるけれど・・・先は遠いようだ)


ただ、母と私では、そんな「学術的な話」は、長続きしない。

「父さんがな、祐君を見たいと」(父さんにかこつけて・・・の可能性も大、イケメンの少年好きのミーハー母だから)


「へえ・・・どないしたんやろ?」(それでも、母の気分を害するようなことを言わんところが、うちの賢いところや)


「実は、時々、話し相手になっとったらしい、去年の夏に」(?初耳や)

「父さんも歴史好きやろ?話も気も合ったらしいんや」(どうして黙っとった?)

「大神神社と源氏の夕顔の話とか、祐君と話をしたみたいでな」(何や?意味わからんよ、それ)


「大神神社と夕顔?何の関係?」(そういうマニアックなこと、言わんといて!)


「うちもわからん、祐ちゃんが奈良に来たら、一緒に聞こうかと」

(いつの間にか、祐君が祐ちゃんになっとるし・・・)


そんなことで、祐君が奈良に、私の実家で両親と話をするのは、既定路線になっているようだ。(両親の頭の中では、かもしれない)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る