第141話春奈の妄想

実は、風岡春奈も、祐と純子に「入学式おめでとう」のメッセージを送っていた。

その後、純子からは、すぐに「ありがとうございます、今後ともよろしくお願いいたします」の返信があった。

しかし、祐からは、既読はついたものの、返信がない。(祐はアパートに着いて、落ち着いてから返信するつもりだった)


(祐からの返信を待ち焦がれていた)風岡春奈は、「え?どうして?」となり、ついには祐に腹が立った。

その後、祐からの返信は、「おそらく入学式が終わった時間」になっても、まだ来ない。

春奈は、ますます、イライラが増幅した。


だから、祐に電話をかけた。(何様のつもり?と文句を言って、アパートに押し掛けようかとも思った)


しかし、祐は電話に出ない。(留守電も嫌だったから、ブチっと切るだけ)


「あのアホ!この私を無視?年下のくせに!」

「あんな・・・可愛い顔して、悪魔?」

「許せないな、あいつ」


そう思ったら、フラチな思いが、起きて来た。

「車で迎えに行って、乗せて」

「涙が出るまで、お説教する」

「そして、反省したら、よしよしと・・・抱く」

そこで、春奈は、ムラムラとした。

「押し倒したい」

「やめてください!が聞きたい」(ほぼ、妄想に近い、危険と思うけれど止まらない)


そんなモヤモヤが爆発しそうになっていると、祐からコールが来た。

「祐です、メッセージありがとうございました」

「入学式は無事、終了しました」

「あれこれあって、返信が遅れてごめんなさい」


春奈は、そこで慌てた。

「あ・・・うん・・・おめでとう」

「無事だった?」(自分でも、何とも、ピントのずれた反応と思う)

でも、少し粘った。

「今から、アパートに行っていい?」


「ごめんなさい、出かけています」


春奈は、またモヤモヤが復活。(女?と思う、気に入らない!)

「誰と?」(まあ純子と真由美と思ったけれど)


「純子さんと真由美さん、都の庭園美術館でメディチを見ています」


春奈は、キョトン。

「え?え?祐君?」

「古文だけでないの?」


祐の声は明るい。

「はい、西洋史も好きです」

「ちなみに、純子さんと真由美さんは、メディチの宝石に夢中です」


春奈は、「今からでも行きたい」と思うけれど、「純子と真由美」という「障害物が祐君の独占を阻む」と思うので、なかなか踏み切れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る