第142話「メディチ家の至宝」展にて

私、真由美は、祐君の配慮に感謝している。

まず、祐君が「メディチ家の至宝」展に誘ってくれた。

(純子さんは。え?という顔で祐君を見ていた)

(でも、独占は許さんばい!負けんよ!)

(祐君と純子さんの姿が、窓から見えた時から、アパートの前で待ち構えていた)


「はい!行きます!」と声高らかに宣言した私に、祐君は「配慮」のアドバイス。

「なるべく、おしゃれな服装がいいような」(スタジャンにジーンズだった)


実際、庭園美術館の中に入って、「スーツ姿で良かった」と、実感した。


とにかく、美術館で「至宝」を見ている人たちは、ほとんど「お金持ちのような、おしゃれ着」だ。

もし、スタジャンにジーンズだったら・・・と思うと、ゾッとするくらい、「格差、分別の無さ」を感じてしまうところだった。


・・・が・・・しかし・・・


そうでなくても、「メディチ家の至宝」はすごい、至上の品々ばかりだ。

詳しいことはわからないけれど、美大の私には、全てが「とんでもない逸品ばかり」がすぐにわかった。


祐君は、なかなか詳しい。

「ミケランジェロ、ダヴィンチ、ラファエロ・・・全てメディチ家と関係が深い」

「メディチ家があったから、ルネッサンスかな」

「その後の宗教改革を招いたのも、メディチ家出身の贅沢な教皇の時代」

「すごく興味を持っているのは、ロレンツィオ、命を掛けてフィレンツェを救った」

「フランス王妃になったカトリーヌも、メディチ家から」

「彼女が、フランス料理とお菓子に洗練を持ち込んだ」

「フランス王家でさえ、彼女以前には、ナイフもフォークも使っていなかったとか」


純子さんは、宝石に夢中。

「ねえ、真由美さん、これ!」と、すぐに呼び出しが来る。

だから、私も、それにご相伴。

「え?マジ?きれい!」(・・・そこで、純子さん以上に、見惚れてしまうのだけど)


純子さんが、美術館を出るところで、提案して来た。

「ねえ、フィレンツェ料理のお店を探したの」

「恵比寿にあるみたい、そんなに遠くない」


私は、ここでも二つ返事「はい!行きます!」

とにかく、「東京はすごいな、何でもある!」と、少々浮かれ気味。


メインの祐君は、苦笑して、私たちに。

「目黒のその店、父さんと行ったことあります」

少し間があった。

「ダイエット諦めます?」


純子さんと私は「うっ!」顔を見合わせた。(ちなみに私は、東京に出て、約一週間、3キロ増えている)


・・・しかし・・・結果は変わらなかった。


純子さんは、にっこり。

「ダイエットは明日から」

私も笑った。(純子さんにつられた・・・と言っておく)

「うん、明日から野菜だけ食べます」


祐君は、「フフン」と笑い、先頭に立って歩き出した。

(そのフフンが、ちょっと小憎らしい!でも・・・可愛い」


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