第18話純子の不安と猛ダッシュ!

私、吉村純子は、不安で仕方がなかった。

悪友可奈子のアホな誘いをキッチリ断ったと言うのに、隣の祐君が夜になってもアパートにいないのだから。


「もう・・・どこに行ったの?」

「変な道に迷って困っていない?」

「・・・困っているに違いない」

「助けに行きたいよ・・・祐君」

「見つけてあげて、ギュッとしてナデナデして・・・」

「涙ぐんで、純子さん、ありがとうって、それを見たい、愛でたい」

そんなメチャ恥ずかしいことまで思ってしまうほど、祐君が心配で不安だった。


何度も時計を見ては、隣の部屋の物音に耳を澄ませるけれど、全く物音はしない。

ついに自分の夕食は、食べられなかった。(決してダイエットではない)

「大丈夫かな、心配」で、とうとう、自分の部屋を出たのが、午後8時半。

しかし、アパートを出て、どこかに行くのではない。

自分の部屋の玄関ドアの前で、祐君を待とうと思ったのだ。


それでも3月下旬の夜は寒い。

風も吹いて来た。

近所の桜が散って、私の髪の毛に。

「風情はあるけれど、寒いよ、祐君」

部屋の中に粉末甘酒があることを思い出した。

「甘酒飲みながら待つかな・・・それも風情だ」

そう思って、部屋に戻りかけた時だった。


足音が聞こえた。


振り返ると・・・祐君が歩いて来る。


私は、我慢できなかった。

思い切りダッシュ!(なりふり構えるなんて、その時の私には無理)

祐君は、驚いた顔。(でも、そのキョトン顔がメチャ可愛い!)


「抱きしめよう!」と思ったけれど、やはり顔から火が出るほど恥ずかしい。

それで、出た言葉が

「・・・祐君、甘酒飲まない?寒かったでしょ?(これもドキドキして嚙みそうになった)」


でも・・・祐君は、ふんわりとやさしい笑顔。

「うれしいです、甘酒大好きです」


次の瞬間、私の指は、予想外の働きを実現した。

祐君の指を「しっかり」からめ取っているのだから。


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