第255話神保町散策 

平井先生のお宅を出たのが、午後3時。(尚、編集者の岡田さんは、先生のお宅に残った)

私、真由美は祐君に相談をかけた。

「神保町に行きたいけど、いいかな」

祐君が答える前に、純子さんと春奈さんが、「賛成!」の挙手。(やはり祐君は、一歩遅れた)


祐君は、それでも、私の意図を察した。

「画材道具でも?」

「確か、三省堂本店の近くにあったとか」

祐君はやさしい笑顔(これが危険、キュンキュン来る)

「行こう、そういえば最近行っていない」


そんなことで、私たちは、文化の聖地神田神保町に到着した。

春奈さん

「危険な街、本好きには」

純子さん

「一日かけたいよね、これだけ並ぶと」


祐君は和菓子屋を見た。

「銭形平次の最中もある・・・いい感じ」

春奈さんが、乗った。

「食べたい!」

結局、おやつとして、全員で銭形平次最中を食べる。

祐君はニコニコしている。

「本当にお金の形の最中だ」

純子さんは、じっと見て考えた。

「うちの和菓子だと・・・ないなあ・・・」

「親父、保守的なの」


春奈さんは二口くらいで食べてしまった。

「でも、名店だよ、行ったことあるよ」


祐君は、少し顔を下に向ける。

「去年の夏は、純子さんのお父さんのお饅頭で、命をつないだ」

「他には、食べられなかった」

「不思議だよね、胃が痛くて仕方ないのに、お父さんのお饅頭だけは食べたくなる」

「お母さんの麦茶にも、救われた」

「ほぼ、熱中症で、お店に入って、お饅頭と麦茶」

そこまで言って、「ハッ」と顏を上に

「ごめん、暗くしたかな」


私は、祐君の肩を揉んだ。

「弱い祐君も好きだよ、もっと見せてもいい」


純子さんは、祐君の頭を撫でた。

「実家に行っても、あまり褒めないでね、つけあがるから」

春奈さんがプッと吹いた。

「ご両親に、嫉妬しているし」


さて、そんな話を終えて、神保町をブラブラ。

お目当ての歴史のありそうな画材道具店に入った。(いろいろ買い込んだ)

祐君たちは、一階のファンシーショップとか地下の文房具店で、いろいろ買っていた。


文房具店を出ると、目の前に三省堂本店。

左からは、美味しそうな天ぷらの匂い。


祐君から、珍しく食の提案があった。

「夕飯は、江戸前天丼にしない?」

春奈さんも、よく来るらしい。

「味は保証しますよ、お嬢様方」

「私は、キスの天ぷらが好き」

純子さんは、完全乗り気。

「この匂いを嗅いで、他には行けないかな」

私も、匂いに抗せない。

「銭形平次最中と天ぷら、今日は江戸の人になります」


夕食を決めて、あとは古本屋街を全員で散策。


今さらながらに、万葉集、古今和歌集、源氏物語の解説本を買う。

祐君も、どんどん手に取って見る。

「僕や、秋山先生、平井先生、佐々木先生とは別の解釈もあるから」


母上の「森田彰子さん」の本も多く、書棚に見つかる。

春奈さんが笑う。

「お母様の本はいらないよね」


祐君は苦笑。

「僕が書いた部分もある」

「まあ、余計な言葉を削って、言い換えたぐらいだけど」

(その苦笑は、私たち女子全員に、驚きと神々しさを感じさせていた)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る