第254話祐の今まで、彼女など

お昼は、宅配、と言っても近所の本格的なイタリア料理店の焼き立ての特大ピザとドルチェ。

その美味しいピザを食べながら、話題は祐に集中した。


純子

「目の下にクマ、どうしたの?」

「これ、完全オフレコ、部外秘にしてね」

全員が頷くと、祐が苦笑。

「愛奈から、午前1時に電話、終わったのが午前4時」

真由美は、ムッとした顔。

「はぁ?何事?」

「いつもの愚痴」

「大したことない、監督の悪口とか」

「でも、今度は、古今に参加したいが入った」

春奈

「それで、祐君も心が動いたの?」

「ダメって言ったら、泣き喚いた」

「もう、ずーっとやらせて、スマホ切ろうかと思った」

「とにかく、昔から、ちょっと何かあると、それやって来る」

「だから、避けていた」

平井恵子

「うーん・・・祐君も大変ねえ・・・聞き役?」

祐は苦笑い

「サンドバッグです」

岡田ひかりは、危険な質問。

「他にも、そういう人はいるの?」

女子全員の「厳しい視線」が集まる中、祐はスマホを見た。

「いないことはない、親父の関係で、芸能界にも知り合いは多い」

「でも、愛奈が一番、重いかな」

「とにかく、長い、聞いている人のことを考えない」

純子

「それで祐君も困ったことあるの?」

祐は、ため息。

「陸上の県大会の当日、それを」

「でも熱中症で、階段でこけたのは、僕にも責任があるし」

平井恵子

「実害ありなんだね、辛いよね、それ」

純子

「祐君は、部活してなくて、帰宅部になったのは、それが原因って聞いたけど」

祐は下を向いた。

「理由はどうあれ、僕の熱中症と怪我で、部活のみんなに迷惑をかけた」

「だから、責任を取った、みんなの長い練習を無駄にしたので」

「顧問にも部長にも、部活のみんなにも止められたけど、残る気はなかった」

「で、帰宅部になった」

真由美は、涙ぐんだ。

「ストイック過ぎるよ、それ・・・」

祐は、慌てて説明。

「静岡県の東部だったから、普通は朝6時半に電車に乗るの」

「朝練がある時は、朝6時」

「駅まで20分かかるから、起きるのは朝の5時前」

「放課後の練習をやれば、帰るのは・・・夜の7時過ぎ」

「それから、夕ご飯を作るから、キツかった」

「姉貴は、何もしないし、命令ばかりで」

春奈が祐をじっと見た。

「帰宅部で彼女は?」

この質問には、再び女子全員の視線が集まった。

祐は、プッと笑う。

「学校に行って帰るだけ、雑談はするけど、それだけ」

「だから家で趣味に走った、音楽と写真、古文」

「母さんから、手伝って、もあったし」

「親父から、この写真に何か言葉をとかも、多かった」

「姉貴は何もしないから、洗濯、掃除、料理もしないとね」

「だから、彼女なんて、考える余裕なし」

平井恵子が、祐の肩をポンポンと叩く。

「お疲れさん、でも、それで祐君は立派に育った」

「程度の低い誘惑も受けていない」

「今度私もライブバーに行ってもいいかな」

祐は、うれしそうに笑っている。

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