第278話祐君は、銀座楽器店で女子高生集団に囲まれる。

私、田中朱里は足がガクガクと震えている。

メトロで銀座に着き、地下のショッピングモールを歩いている時も、ワナワナしていたけれど・・・

四丁目の階段をのぼって、地上に出た瞬間・・・

あの時計台が!そして三越が!

大きな交差点、通り過ぎる多くの人(日本人ばかりではない、実に多国籍)

純子さんも、目がまん丸だ。(豊胸も揺れている・・・)


ところがだ・・・

祐君は、「七丁目に行く」と、時計台も三越にも行かない。

背を向けて、歩いて行く。


右側にも左側にも、超有名老舗とか、豪華ブランドショップばかり・・・

って・・・見とれていられない。(祐君は目的まっしぐらで、ウィンドウショッピングにカケラも興味がない)


ライオンのビールを過ぎたところに、その楽器屋さんはあった。(これも、日本のトップブランドのお店・・・へえ・・・これが・・・)

店に入ると、祐君はそのままエレベーターに。(実にスムーズ、迷いがない)


エレベーターの中で、祐君。

「管楽器売り場に行きます、もしかすると修理をお願いするかも」

純子さん

「いろんな楽器があるの?」

祐君

「銀座には、もう一つ店がある、ここでダメって言われたら、その店に行く」

「ちなみに、アンパンの木村屋の隣、和光の時計の直近」


祐君に続いて。エレベーターを降りると。管楽器がたくさん陳列されていた。

金管楽器はトランペット、ホルン、トロンボーン、チューバ。

木管楽器は、ピッコロ、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、サックスなど。

(すごくキラキラしていて楽器店デビューの私は、面白くて仕方がない)

(楽器博物館にいるような感じ)


祐君は、そのまま楽器店のきれいなお姉さんと会話。(・・・大人美女・・・祐君を見る目が危険・・・祐君を見ないで、楽器を見なさい!)


祐君の声が聞こえて来た。(少し気落ち気味)

「そうですか・・・難しい?」

「時間がかかる・・・はい・・・」

「わかりました、他を当たります」


そんな話を聞いていると、後方から、ペチャペチャと、いかにも「女子高生集団」の声。

純子さんは、祐君の袖を引いた。

「逃げよう、祐君を見とる」

「ライブバーが何とかって・・・言っとる」


私も耳をこらした。(確かに聞こえて来た)

「ねえ・・・あの人・・・」

「うん・・・ライブバーで、ジュリアと・・・」

「え?今日はTフィルのジャンと村越さんとも」

「でもさ・・・可愛いよね、美少女フェイス」

「うん、お化粧したい!」

「ピアノも、フルートも・・・すごい」

「祐さん・・・いや・・・祐様だよ、気品あるお顔だ」


ただ、祐君は、何の頓着もない。

そのまま、振り返ってしまったのが、事件となった。


その「女子高生集団」が祐君の前に。

「あの・・・もしかして・・・祐様?」

「あーーー可愛い!サインください」

「あの・・・握手、いいですか?」

「はい、私も!」

「だめ、全員!」

「ピアノ聴きたいです、お願い!」

「フルート持っていますよね、どうかしたんです?」

「え?壊れそう?私のフルートと交換、いいですよ!」

「あーーー間接キス狙い?」


祐君は、タジタジだ。(ウカツに振り向くから・・・どう脱出するのか、頭が痛い)

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