第374話女子全員が森田事務所に?

私、田中朱里も、出版社伊藤さんの話は、酷いと思った。

(目の前の講演代読で必死、余裕がない祐君に、さらにプレッシャーをかける)(実に安易な発想で)


八幡山からの帰り道、祐君はずっとムクレていた。

春奈さんは、スマホで平井恵子先生と連絡を取っているようだ。

「はい、わかりました」

「祐君に非はないと」

「あ・・・先生からも伊藤さんに?ありがとうございます」


祐君の表情が和らいだのは、千歳烏山の駅に着いてから。

「いろいろと、ごめん」

「気分直しに外食して帰ろうか」

「親父から、お金もらった」

(マジに珍しい祐君からの外食のお誘い:集団だけど)


純子さんがトントンと祐君の肩を叩いた。(こういう時は、安心できる純子さん)

「うん、町中華にしない?」

「それも爆食系で」


春奈さんと、真由美さんも、乗った。

「やはり食べないと、元気が出ないよ」

「嫌な気分も、食べちゃおう」


祐君も、笑ったので、全員で町中華に入った。


「酢豚」「中華前菜盛り合わせ:叉焼、クラゲ。いろいろ」「青椒肉絲」「肉団子」、「中華焼きそば」「海老炒飯」「搾菜スープ」などの、かなり多め。


祐君は、少し弁明。(しなくてもいいのに)

「とても、今の状態で仕事増やしたくなかった」

「森田事務所も母さんも、忙しい、嫌がるはず」

「出版社が言えば、何でもやる・・・そんな人にはなりたくない」


春奈さんは、少し冷静。

「秋山先生の講演会は、困るよね」

祐君は冷静。

「難しくないさ、延期すればいい」

「もともと、先生の仕事、今回は代読をするだけ」


純子さんも頷く。

「古今、万葉、音楽に加えて、大学の勉強もあるよね」

真由美さんも、その考えに同意。

「祐君は手抜きが出来ない性格」

「出来が保証できない仕事はしない」

春奈さんは、祐君をじっと見る。

「職人気質なのかも」


祐君は、少し笑う。

「もともと、父さんの実家が、西陣の着物屋」

「丁寧に仕上げることが大切で、数百年の歴史」

「そんな血かな」


そこまで言って、表情を変えた。

「だから、姉貴が、別人種なんだ」

「ゴリラ女と言われるのも当たり前」


純子さんは、肉団子を祐君の取り皿に。

「そう?私、お姉さん大好き、かっこいいなあと」

春奈さんも、続く。

「美人でスタイルもいいし、頭も切れる」

「頼れる人だなあと」

真由美さんは、決定的。

「祐君とも、お姉さんとも、生話がしたいなあと」


そこまで話が進んだので、私朱里は、切り出してみた。

「私たち全員を森田事務所で使ってくれませんか?」

「つまりアルバイトで・・・将来的には、就職の意味」


祐君は、花のような笑顔。

「OKだよ、姉貴と母さんも安心するかな」


全員が、うれしい感じ、中華の爆食が進むことになった。

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