第233話国民的アイドル桜田愛奈と祐君①

私、真由美も、純子さんも、そして田中朱里も、腰が引けるほど驚いた。

名古屋名物「味噌煮込みうどん」を食べながら(名古屋嬢の田中朱里が、ようやく気合を入れてメインで作った)、祐君は、ようやく我々の「追及」に答えた。(祐君が誰かからメッセージをもらい困惑顔の情報が、純子さんからあったから)(厳しい追及?いや、祐君は保護監視対象なので、当然・・・オーケストラ部のこともあるし)


祐君の口から出たのは意外な名前だった。

「ねえ、桜田愛奈さんって知っている?」

純子さん

「ああ、あの可愛い女優、モデルさん?子役の時から有名だよね・・・国民的美少女なんて言われているよ」(落ち着いている、さすが・・・見習わんといかんばい)

「祐君、ああいう人が好みなの?」(言葉がきつくなった・・・博多女は、つい本音だ)

田中朱里

「確か、同学年、モデル界では別格、雲の上」(名古屋嬢も、謙虚になっている)


祐君

「親父が、言ったみたい、僕が上京しているって・・・撮影したのかな」

純子さんは、首を傾げた。

「祐君、それ・・・意味不明、だから何?」(お・・・純子さんの尋問開始?)

祐君

「桜田さんとは、子供の頃から知り合い」(祐君を張り倒したくなった)

「親父の撮影に付き合って、一緒にモデルになったこともある」(そうか・・・許す・・・その写真見たい!)

「年賀状はもらった、返事もした」(もらってから返事するの?祐君らしく一歩遅れる)

「で・・・要するに逢いたいらしい・・・またモデルを一緒にって」(また、話の順番が変・・・まどろっこしい・・・可愛いけど)


田中朱里の声が震えた。

「え・・・マジですか?」(その気持ちわかる・・・格上モデルに祐君を取られる)(祐君がまた別世界の人になる?辛いよ、それ)


祐君は首を横に振った。

「でも、断った」

「忙しくて無理だから」(・・・このあっさり感は何?)(国民的美少女も祐君は関係ないのか・・・)(祐君のほうが、浮世離れしているかも)


純子さん

「どんな性格の子なの?」


祐君

「悩みこむよ、案外」

「実は地味」

「モデルも俳優も好きではないとか、こぼしていた」


「そんな。もったいない」

「可愛いと思うし、活かせばいいのに」


田中朱里

「でも、モデルとか芸能界は、足の引っ張り合いで、暗い闇の部分もあるしね」

「嫌なら、早く辞めたほうがいいかな」


祐君は腕を組んだ。

「悩んでいるのかな」

「でも、長話になるの、彼女・・・昔から」


純子さんが祐君の背中をポンと叩いた。

「聞いてあげて、そうでないと、わからない」

私も考えた。

「人目につかないところかな」

「ここでいいかも」

田中朱里も、頷いている。


祐君は、小さく頷いて、メッセージを送る。

「とにかく変装して、僕の部屋で」


すぐに返信があったようだ。

「今から来るらしい」

「30分以内」


私たちは、ビクッとなったけれど、祐君は慌てない。

味噌煮込みうどんを、普通に食べている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る