第213話江戸探訪へ①六義園

私、真由美から見て、祐君は顔とか、身体全体の緊張が解けた感じ。

やはり、平井先生と秋山先生との「初仕事」を「無事クリア」して、ホッとしたからだろうか。


その祐君が、私と純子さんの顔を見て来た。

「まだ午後1時前、このままアパートに戻っても面白くないので、歩きます」

「でも、予定がある人は、ご自由に」


純子さんが、「はぁ?」と祐君に迫る。(・・・近過ぎ!ったく!)

「どこに行くの?私たち、まだ都内慣れていないの」(うん!その通りやけん、もっと言って!)

「このまま、千歳烏山のアパートへ帰れん、迷子になる」(確かに・・・おのぼりさん二人だ)


私も、祐君に迫った。

「祐君は、私たちと一緒だと、都合が悪いの?」(ここで祐君は焦った・・・その焦り顔も好き、つんつんと、いじりたくなる)


祐君は、諦めたのか、クスッと笑う。(・・・でも意味深な笑い・・・フィレンツェ料理の爆食の恥ずかしい記憶がよみがえる)

「六義園でも行こうかなと、天気もいいから」(何ですと?知らん、そんな場所も名前も・・・)


純子さんの目が輝いた。

「どこにあるの?遠いの?」(私と同じ、直接的だ)


祐君は、少し上から目線。

「まあ・・・駅名を言っても・・・駒込です」

「案内します」

と、スタスタと歩き出す。


ただ、私も純子さんも、「ただついて行くばかり」、電車内をキョロキョロしながら、駒込で降りて、六義園に辿り着いた。


純子さんの声が弾んだ。

「うわーーー!広々と!」

「少し桜も残っていて」

「空気も美味しい」


私も、身体の力が抜けた。

「うん・・・東京にこんな・・・いいなあ・・・」


祐君は、パンフレットを要約して読む。(うん、ガイドさんだ)

「徳川綱吉の時代」

「柳澤吉保が徳川綱吉から下屋敷として与えられた駒込の地を、自ら設計して、池を掘り、山を築き、7年の歳月をかけて、こんな庭園を造った」

「六義園の名前は、古い漢詩集の「毛詩」の「詩の六義」、すなわち風・賦・比・興・雅・頌という分類法から」


純子さんは、途中から聞いていない。

「とにかく歩くのが、気持ちがいいな」

私も同じ。

「東京に出て、こんな広々としたところは初めて」

「だから、胸がスッとする」


祐君は粘った。

「柳沢吉保って水戸黄門にも出てきます、悪役として」


純子さん

「ああ・・・そう言えば・・・」

「江戸か・・・池波正太郎さんも好きなの」

純子さんも乗った。(最近、気が合う)

「剣客商売が好き、渋いよね、あれ」

「江戸文化探訪もしたいなあ」


祐君は、うれしそうな顔。

「浅草に行く?」

「寄席で江戸落語もいいかも」


浅草行きは、そのまま決定になった。


しかし、六義園は広い。

高いビルも見えている中、この自然も不思議感覚。

江戸と現代の同居かな、そう思う。

博多にも、大濠公園があるけれど、見えるビルは高くない。

しかも、ここは東京、日本の中心地・・・そう思うと、またワクワクして来る私である。

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