第243話祐は、再び杉田香織に絡まれる 

翌日、祐と純子が登校し、キャンパスを歩いていると、再びヴァイオリン女子の杉田香織に絡まれた。

「祐君が拒絶するから、オーケストラ部がつぶされたの、責任取りなさいよ!」


これには、おとなしめを通していた純子も怒った。

「おかしいと思いますよ、その考え方」

「どうして何でも祐君の責任にしたがるのですか?」

「そもそも、突然、我がままを言って来たのは、あなたでしょう?」

「祐君にオーケストラ部をつぶす権限なんてないことだってわかっているでしょ?」

「単に自分のストレスを、祐君ではらしたいだけ」

「これも、大学本部に通報します」


祐は、純子の口調の強さに驚いていたけれど、杉田香織に聞く。

「僕たちの、あちこちで、動画を撮っています」

「もう少し、周囲を確認して、話しかけるべきでは?」

「それと責任って何ですか?」

「僕に大学をやめろとか?」

「あるいは、ピアノを弾くなとか?」

「それとも…旧オーケストラ部全員に前で謝罪するとか?」


祐の言葉が鋭かったようで、杉田香織はオタオタした顔になる。

「あ・・・つい・・・感情が昂って」

「祐君の顔見たら・・・」


その杉田香織が気に入らないのか、取り囲んだ学生から非難の声があがる。

「あの子って、いつも高飛車」

「ヴァイオリンが弾けるから、偉いって感じ」

「そうそう、何をしても自分は悪くない、相手が悪い、世間が悪いタイプ」

「自称芸術家・・・実は単なるお子ちゃまタイプ?」

「あの子の顔見たくない」

「服もやたら派手なだけ、センスもない」

「やめるのはあの子のほうだよ、大学の恥を全く自覚していない」


杉田香織は、顔をおおって泣き出した。


祐は少しためらったけれど、純子が腕を引っ張ったので教室に向かって歩き出した。

「ごめん、また絡まれた」

純子

「謝る必要なし」


そんな話をしていると田中朱里が、寄って来た。

「今日もお昼は、あのライブバー?」

「うん、今日は、焼肉定食だって」

純子はプッと吹く。

「タンパク質足りていないと、奥様が判断したの」

朱里も、笑う。

「そうね、糖質も足りないかな」


「今日は歌手も来るらしい」

「昔、シティポップで有名になった人」

純子は初耳。

「へえ・・・誰?」

祐は、困り顔。

「ごめん・・・忘れた」

「アルバムのジャケット写真を、親父が撮った」

朱里は懸命に考えた。

「うーん・・・父が持っていたような・・・」

純子

「祐君は、その人と話したことは?」

「あったかなあ・・・伊東の別荘に泊って・・・朝、釣りで一緒に船に乗った」

「ギターが上手で、クラプトンはすごかった」

朱里はクラプトンで目が輝いた。

「え・・・私、クラプトン好きだよ」

「リクエストできるかな」


「1回のステージで、数百万、もっと?」

「ただでは、やらない」

「ジュリアと僕は、遊びだよ」

祐は、苦笑している。

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