第275話杉田香織は祐のウィンクに陥落
私は、杉田香織、ヴァイオリン女子です。
祐君より一学年上。
動画サイトで祐君を見て、大学オーケストラに誘った。
結果は、皆様ご存知の通り、悲惨で恥ずかしいことに。
Tフィルのジュリアとデュオしていたから、紹介して(できればレッスンも)もらいたかったのが本音。(ジュリアにレッスンしてもらえれば、かなりステイタスもあがるし、ほとんどのヴァイオリン女子は当然、男子にも、マウントが取れる、と思っていたから)
そのマウントを取る、ということで言えば、私の今までの人生は、その繰り返し拡大だった。
普通より、裕福な家に生まれたのが、まずマウント。
3歳から地元(金沢)のオーケストラの先生からヴァイオリンを教わったのも、マウント。
(金沢のド田舎で、泥にまみれているガキ連中とは、完全に格差)
小学校、中学、高校と、地元私立名門学園。(父が、県議会議長になったので、推薦合格)
中学から入った学園オーケストラでは、最初から当然コンサートマスター。(私の実力、親の意向もあった)
近寄って来る同年輩男子も女子も、多かったけれど眼中になかった。(私を目当てか、父への伝手を願うか、どっちにしろ、相手にしなかった)
私が命令すれば、先輩も後輩もなかった。
「楽譜持って来て」「飲みものを持って来て」は、当然。
気に入らない人は、先輩も後輩もない、「私」の意向で、オーケストラからも、学園からも追放した。
金沢の地域紙の表紙に、何度もなった。
インタヴューも何度も、「理想的な文化女子」とも、賞賛され続けて来た。
そんなことで、地元金沢に戻れば、今でも女王と自覚している。
でも、高校2年から、そんな生活に、実際飽きていた。
だから、東京に出ることにした。
当然、両親は心配した。
田舎者は通用しないとか、言われた。
でも、信じなかった、自分の意思を貫き通した。
都内に出て、まず大学のオーケストラに入った。
初心者も多くて、がっかりした。
だから、大学選抜オーケストラの試験を受けた。(もちろん金沢オケの先生と県議会議長の父から国会議員に話を通した)
簡単に合格、大学選抜オーケストラのメンバーになれた。
しかし、問題があった。
他の人と、ヴァイオリンの実力に大差がなかった。(負けは認めたくない)
ただ、圧倒的な力の差がないと、マウントは取れない。
よほどいい先生につくか、目立つ先生につくか、いろいろ考えて、一年を悶々と過ごした。
だから何とかしたくて、かの超美人実力派ヴァイオリニストのジュリアにつけば、ようやく私の「マウント復活」が果たせると思った・・・けれど・・・
祐君は、すご過ぎた。
「追いつけない格差」は、絶対的にある。
いろいろ迫って、高飛車して、本当に申し訳ないと思う。
今日も、超凄腕プロと互角に渡り合って、かっこいいし。
まさか、フルートまでとは・・・(ピアノとかギターでもすごいのに)
最後のモーツァルトは、腰が抜けた。(祐君に見とれるだけ)
最初に見た時に、苛めるような口調になったのは、祐君がメチャ可愛かったから・・・ついついだ。(ツンデレして、気を引きたかった)(酷い逆効果で、オーケストラがつぶされた)
で・・・今は、ほぼ祐君のストーカー。
マスターは「変なことをしなければ」と、祐君の出演日を教えてくれる。
アパートまでは、かなり高い壁。
祐君の周りを、豊満美人の純子、モデル並みの美少女真由美、完全美少女モデルの田中朱里が、がっちり固めているから。
でも、祐君は、本当に美形だ。(ヨダレもの)(時々顔色が悪い時があって、心配になる)
いつか、何とか、「普通の話」がしたいなあと願う。
まだ、怒っているかな、警戒されていると思うから、自分からは声をかけられない。
しっかり謝って、「いつまでも怒らないで」と言いたい。
じっと祐君を見ていたら、目が合った。(うわ・・・きれいな目・・・お人形さん?)
しょうがないから、頭を下げて「ごめん」。
祐君は、ウィンク・・・(私は身体の力が抜けた)(目も潤んじゃった)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます