第46話祐君は下を向いてしまった。
「ごちそうさまでした」(その言い方も、たどたどしくて可愛い)
祐君は、ちょこんと頭を下げた。
「いえいえ、どういたしまして」(まあ、母のアドバイスとレシピ通りだし・・・)
「去年以来で・・・すごく美味しかった」(祐君は、本当にうれしそうな顔)
私は、またドキドキして来た。(言葉の一つ一つに嚙みそうな気がする)
「ところで祐君」
「去年の夏、長谷寺に行ったの?」(この時点で、胸がバクバク!揺れているかも)
祐君は「え?」と驚いた顔。(その丸い目が可愛いけれど)
「どうして、それを?」(釣り糸に引っかかったかな・・・シメシメだ)
「その後、お饅頭を奈良町で食べなかった?」(また、胸がバクバクする、祐君より私の顔のほうが赤い・・・恥ずかしい)
祐君の目が、キラキラと輝いた。
「え・・・あ・・・いただきました・・・美味しい麦茶も」
「お店に座らせてもらって・・・恥ずかしいけれど、お饅頭一つだけなのに」
祐君は、じっと私の顔を見た。(私は恥ずかしいから、揺れる胸を抑えた)
「純子さん、あの和菓子屋さんのお嬢さんなんですか?」
「え?お嬢さん?そんなお嬢さんなんて・・・娘なの」(ドキドキして、返事がメチャクチャ、お嬢さんのほうが可愛いのに)
祐君は、また目がキラキラ、少し潤んでいるような感じ。
「いいお母様で、本当に疲れていたので、助かりました」
「お母様がいなかったら、去年の僕は、どうなったことか」
「店の前を通るたびに、やさしい声をかけてくれて」
「本当にありがたい、女神様のような」(私は、ここで母に嫉妬した、褒められ過ぎだ)
「母と話をしていたら、そういうことになってね」(細かいことを言っても仕方ない)
「また、奈良に行ったら、お話したいなあと」(これは母に言わない、娘の意地!)
「祐君のお母様も長年のお得意様とも」(少しずつ外堀を埋めようかと)
「はい、僕も母について、何回か」(やはり、祐君は素直な良い子だ)
しかし、私は少しずつが下手だった。
やはり、口に出てしまった。
「で・・・何で奈良に一か月以上もいたの?メチャ暑いのに」
祐君は、いきなり辛そうな顔。
とうとう、下を向いてしまった。
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