第246話祐の悩み  西新宿へ

祐自身、食欲は増したと感じている。

何より、秋山大先生の原稿が無事に進んでいることが、緊張を和らげている。

ただ、ライブバーでの昼食は、少々悩んでいる。

確かにすごく美味しい。

問題は、洋食ばかりになっていること。

食欲が増したとはいえ、洋食が続けば、胃に重い。

時々の胃の痛みは、プレッシャーばかりではないと感じている。


それと、あのライブバーでは、どうしても父哲夫や母彰子の影響が強過ぎる。

どうしても「森田哲夫と森田彰子の息子」と見られてしまうので、これでは「親の七光りと」あるいは二人だから「十四光」と言われても仕方ないと感じている。

音楽の「結果物の出来」を、そんなフィルターを通して見られたくない、そんな気持ちで充満している。


講義は、午後2時半で終わった。

祐は、純子と朱里に声をかけた。

「行きたい、と言うか、歩きたい場所があって」

「真由美さんにも、声をかけようかなと」

「お金がかかる場所ではないよ」


純子は、目が丸い。

「だから、どこ?」

朱里も、祐を見るばかりで、何も言わない。


祐は、恥ずかしそうな顔。

「西新宿・・・東でなくて」

純子は意味不明

「西と東でどう違うの?」

朱里はようやく言葉を出す。

「都庁とか、大きなホテルとか?」


祐は頷いた。

「高層ビル群を歩きたいなあと」

「それも東京だから」


純子は、そのままスマホで真由美に連絡。

「真由美さんは、3時には京王線に乗るって」


祐たちは、そのまま出発。

待ち合わせは、西口京王線改札に決まった。


西口京王線改札で真由美を待つ間、純子と朱里は、「はぁ・・・」とワクワク顔。

純子

「これぞ、マジに東京って感じやな」

「新宿におるんやなあ・・・」

「みな、歩くのが速い」


朱里

「うん・・・ようやく東京人になったような」

「ここ、映画でも、よく見ます」


真由美も合流して、笑顔。

「たくさん写真撮れそう」

「これは、博多の頑固母さんにも送る」


祐は歩き出す。

「東京人には、当たり前の、日常」

「でも、ここも日本の象徴」


純子からリクエストがあった。

「祐君、都庁の展望台に」

「そこでピアノ弾いて」


祐は、少し考えた。

「うん、弾いていいなら、弾くかな」

「そういうのも、やって見たかった」


祐の後ろで、純子、真由美、朱里は顔を見合わせ、笑顔。

積極性が出て来た祐が、うれしいようだ。

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