第81話焦る菊池真由美と、母の会話

私、菊池真由美は、自らのウカツさと、吉村純子(実際、何とも思っていなかったけれど)の「したたかさ」に、悔しくて仕方がない。

祐君は、まず電話がかかってきて(何か、大事な電話みたいだった)、実にアッサリと、自分の部屋に入ってしまった。


そこまでは、許せる。


少し間を置いて、(それが女のたしなみと思ったし)、祐君の部屋をコンコンとしようと思って、自分の部屋のドアを少し開けたら、なんと、吉村純子が菓子折のようなものを持って、祐君の部屋に入って行くではないか!


・・・先を越された?

・・・あの、胸が少し大きいだけの、それ以外は10人並みの、吉村純子に?

・・・ウカツだった・・・

・・・甘かった・・・


しかし、悔やんでも仕方がない。

そして、ここで博多女の血が騒いだ。


・・・奈良の女になど、負けんばい!

・・・博多女の本気を見せたるばい・・・


ただ、そうは思ったけれど、たいした「策」は浮かばなかった。

せいぜい、母さんに電話するだけ。


「あのさ、特上の明太子と高菜を送って」

「それと、通りもんも、一箱」


母は、フフンと余裕の笑い声。

「もう、ホームシック?」

「そんな弱い子だったの?」


「違うって!」

「祐君に食べさせたい」

「とにかく早く」


「どげんした?」

「・・・もしかして、恋敵?」(まあ、母の勘が鋭いこと・・・)


「違うって、相手にならん!」(簡単には、うん、とは言わんよ)

「って・・・負けんよ」(でも、ここで、こう言ってしまうのが、何か弱い私だ)


「はいはい、太宰府名物梅が枝餅も入れておくよ」

「なんで、それを言わんの?」


「・・・あ・・・」(気が高ぶって、忘れた)


「今日、祐君のおじさんの、森田義夫さんと話したの」

「祐君は、好きみたいだよ、梅が枝餅」

「地元じゃ、そんなに食べんから、忘れた?」(まあ、そうかも、糖質オフって言いたいけれど、今は言える立場でないな、悔しいけれど)


「じゃあ、お願いします」


「でもね、恋路の助けを、母に頼むようだと、まだまだ」(図星過ぎ・・・母にはかなわない)


「う・・・」

(私は、それしか、母に返せなかった)


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