第390話講演代読終了後のステージで
祐は、盛大な拍手を浴びながら、父森田哲夫に目で合図。
(森田哲夫も祐の意図をすぐに察知した)
森田哲夫は、秋山康の車椅子を押し、ステージに向かう。
(美代子夫人も続く)
その様子を見ながら、祐はサッと動いて司会者の佐伯楓の耳元で何かを言った。
佐伯楓は、笑顔で頷き、「何かを」純子、真由美、春奈、朱里に伝えた。
父森田哲夫と秋山康、美代子夫妻がステージに登場、祐と並ぶと、やはり盛大な拍手。(美代子夫人は、目頭を抑えている)
祐と父森田哲夫、秋山康夫妻の周囲を純子、真由美、春奈、朱里がステージに出て、囲んだ。
祐は、顏を赤らめて、語り出す。
「今回は、僕の拙い講演代読をお聞きいただき、ありがとうございました」
「秋山先生の急遽の代読でなければ、ここに立つことはありませんでした」
「そして、僕と一緒に立つ、純子さん、真由美さん、春奈さん、朱里さんに、本当に献身的に協力していただいて・・・あまりヘマをしないで読み終えることが出来ました」
「諸先生方は、すでにお気づきと思われますが、本日の原稿は、秋山先生の原稿を僕なりに、簡単に書き直しただけです、中身は何も変えていません」
秋山康が、うんうん、と満足そうに頷き、祐からマイクを取った。
「私は、祐君の書き直しが、素晴らしいと思った」
「できれば、自分で読みたかった、こんなわかりやすい文なら、みんなが聞いてくれると」
「下手に難しい言葉をこねくり回さず、わかりやすく、しかも情緒にあふれた言葉で書き直してくれてある」
秋山康は、少し間を置き、続けた。
「祐君が書いているブログも同じです」
「万葉、古今、枕草紙、源氏、方丈記、徒然もあるかな」
「実にわかりやすい、いい日本語を選んで書いてある」
「しかも、ポイントを外していない、だから読者が増える」
「本当に、無料が、もったいない」
秋山康は、祐の手を握り、聴衆に語り掛けた。
「こういう、素晴らしい才能を、大事にしましょう」
「日本の美しい古文を、祐君に託したい」
「僕は、祐君を後継者と認めます」
祐は、客席の母彰子を見た。
姉瞳に抱えられ、泣いている。
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