第187話祐、純子、朱里の会話(1)

私、田中朱里は、かなりドキドキして、英語の授業の終わりを待った。

祐君の隣に座っているだけでも(今回は遠ざけられなかった!)、胸が揺れるほど。(祐君、気がついている?でも、授業に集中している感じ?いや・・・寝ているし・・・笑える・・・横顔も天使人形みたいだ)

祐君が講師に指名されて英文テキストを読んでいる時は、胸が張りさけそうだった。

(でも、え?え?と言うくらいに上品な英語・・・この子って・・・何?って感じ)


英語の授業が終わり、やかましいキャンパスを出て、祐君ともう一人の女の人と歩く。

(マジに邪魔だけど、二人は信頼し合っている感じ・・・文句が言えない)


祐君の「この前入って、何となく親しくなった」という、昼は喫茶店兼夜は音楽バーに三人で入った。

マスターは苦み走った中年の、でも、かっこいい紳士。

「おや、祐君、今夜こそ来てよ」(どういう意味?)と言いながら、テーブル席に誘導。


祐君から自己紹介。

「森田祐です・・・って、二人とも知っているよね」(・・・最初から、笑える)(マスターも、カウンターの奥でククッと笑っている)


隣の豊胸女性も自己紹介。

「吉村純子です、祐君とはアパートで偶然、隣の部屋。実家は奈良元興寺町の和菓子屋」

「実は両親とも、私より先に、祐君に会って、いろいろ話をしたとか」(ほー・・・そんなご縁が・・・でも、その和菓子屋さん、私も行ったことあるかも、名古屋嬢だけど、一人旅も好きだった・・・おばあ様は怒っていたけれど)


私も自己紹介。

「田中朱里です、笹塚に住んでいます。実家は名古屋、祐君とは中学3年生の時に、熱田神宮で写真撮影の時にご一緒・・・あ・・・小さな頃からモデルしていました」(緊張して、話の順番が、ゴチャゴチャ・・・顔から火が出る!)


祐君が、ニコッとして(うわ!可愛い!そんな可愛い顔するの?今までの冷たい顔は何?)(やばいよ・・・また、胸が揺れた・・・自分でコントロールできない・・・ぷるんぷるんだ・・・元気過ぎる!)

「ついでにお昼も食べていきませんか?」と聞いて来た。(ふむ・・・合理的、効率的だ)


純子さんは決めるのが速い。

「私は・・・ビーフカレーとブレンド珈琲」(う・・・定番)

私、田中朱里もモタモタしてはいられない。

「オムライスとブレンド珈琲」(また、定番・・・)

祐君は、少し迷った。(迷い顔も、可愛い、ほっぺをツンツンしたい)

「ビーフシチューとパンと紅茶」(ほお・・・渋いなあ・・・)


マスターに注文を終えた時点で、祐君が私を見て来た。(・・・また、ドキドキ、胸が揺れる・・・)

「あの、田中さん、僕にお話とは?何度も時間を合わせられなくてごめんなさい」(・・・悪気とか、嫌われていないと思って、うれしい・・・って目尻が潤んだ)


「あの・・・ずっとお逢いしたくて、熱田神宮の撮影からです」

「でも、連絡方法もわからないし・・・それで高校3年間を過ごして」

「諦めていたら、先日の武道館の入学式でお見かけして・・・」

(それ以外のことは言えない・・・ちょっと噛み気味、目が潤んでいる)


祐君は、神妙顏。

「うーん・・・まず、そんな敬語はつかわないで」

「同じ大学の同じ学部の学生、その立場は同じ」(この言葉で、肩の力がストンと落ちた)


純子さんがニコニコ顔。(まあ、観音様みたいに顔がやわらかい・・・ホッとする)

「ねえ、朱里さん、中学3年生の時の祐君ってどんな感じ?」


祐君は、横を向く。(恥ずかしい?でも、言っちゃう!)


「はい、お人形さんでした、だから一緒に写真を撮りたいと、無理やりに」


純子さんは、プッと吹く。

「可愛いよね、ほんまに」(お・・・関西弁が出た!)


祐君は、たどたどしく話す。(笑えるくらいに可愛いなあ)

「あの時は、着物の樟脳の匂いが強くて、頭痛が酷くなって、それ以外は何も覚えていない」


私は、スマホをバッグから出して、待ち受けにも使っている「証拠写真」を見せる。


純子さんは、手を打って大笑い。

「うわー・・・いい!これ!可愛い!二人とも!」


祐君は、頭を抱えている。


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