第216話オーケストラ部員と少しトラブル

翌月曜日、祐と純子が大学キャンパスに入ると、数人の男女学生が近づいて来た。

全員が何かしらの楽器を抱えている。(ヴァイオリン、ホルン、チェロなど)

最初に声を掛けて来たのは、目つきが鋭い男子。(ヴァイオリンを抱えている)

「ねえ、君、この前、あのライブの店でピアノを弾いていたよね」

祐は、答えに慎重。

「あの、あなた方は誰?」

目つきが鋭いヴァイオリン男子は、ムッとした顔。

「大学オーケストラの菅野、2年生」

「お前は?」

祐は、嫌そうな顔に変わる。

「1年の森田祐です」

「それで、そんなことを聞いて、何がしたいの?」

今度はヴァイオリンを持った女子が、高い声。

「私もオーケストラ、2年の杉田香織」

「あのさ、一緒にヴァイオリンを弾いていた人、ジュリアさんだよね」

「どうして知り合ったの?」

祐は首を横に振った。

「あの、授業がもうすぐ始まって急いでいます」

「申し訳ないけれど、答える必要も感じない」

「迷惑です」

するとホルンを抱えた男子学生が怒鳴った。

「おい!てめえ!何様のつもりだ!」

「菅野さんと杉田は、日本大学選抜オーケストラのメンバーだ」

「ありがたくも声をかけてもらったんだ、答えろ!一年坊主!」

祐は、ますます嫌そうな顔。

「そういうの興味もないし、価値もわかりません」

と、そのまま歩き出す。


少し歩くと、後ろから声が聞こえて来た。

ヴァイオリン女子の杉田のかん高い声。

「生意気よ!信じられない!」

ホルン男子も吠えている。

「全く、気に入らねえ!」


祐と純子が「馬鹿馬鹿しい」とため息をついていると、田中朱里が走り寄って来た。

「大変だったね、でも、何となくわかった」


純子

「何となくって?」

田中朱里

「要するに、祐君をオーケストラに誘いたいが一つ」

「もう一つは、ジュリアを紹介して欲しい、らしい」

「ジュリアにレッスンを受けて、それを自慢にしたいのかな」

「そんなことを言っていた」

「オーケストラに入る余裕はないし、興味もない」

純子

「あの高飛車な態度は嫌」

田中朱里

「私も、動画見ました・・・良かった」

「急に決まって誘えなかった」

田中朱里

「それはいいの、夜は出歩くと、母と祖母がうるさいから」

純子

「あの連中、しつこいかな」

「断るしかないし、付き合う余裕もない」

田中朱里

「でも、誰が動画見ているかわからない、気を付けたほうがいいかも」

純子

「マスクとサングラスが必要」

祐は、寂しそうな顔。

「あのライブバーに行きづらくなった」

「昼飯の場所が減る」

田中朱里

「学食も人が多いよね」

純子

「当分は、お弁当にしようか?」


祐は、少し考えている。


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