第380話「初めて」というより、犯罪被害者のようだ。

私、純子は、肩を落とした祐君が、可哀想でならない。

つい、女子集団のノリで、祐君を責めてしまった。

かなり、嫌な思い出だと思う。

(大人の女の人たちに、おもちゃにされ、その勢いかなと)

(少なくとも、祐君からとか、そんな性格の子ではない)


祐君は、小さな声で続けた。

「危ないところで救われた」

(女子みんなの顏が、ホッとなった)


「救ってくれたのは、ヘア・スタイリストの小島由里さん」

「ホテルのドアが開いて、そのまま連れ出してくれた」


春奈さんの顔は、厳しい。

「その、襲って来たのはモデルさんたち?」

「もう、犯罪だよ」


祐君

「親父も怒って、全員クビ」

「業界からも追放された」

「親父にごめん、って謝られた」


真由美さん

「寸前でも、何でも・・・酷いよ」

「小島由里さんは、女神様だよね」

(祐君はコクリと頷いた)


朱里さん

「大人の女の人は、あくまでも遊び、祐君を弄んだだけ」

「でも、祐君は恐怖でしかない」


祐君は、落ち着いてきたようだ。

ようやく、説明が具体的になった。

「大人かどうかは、わからない」

「ホテルの部屋に呼び出されて、入った」

「大人の女の人は、全員脱いでいた」

「そのままつかまって、もみくちゃに」

「ほぼ、裸にされかけた」

「それを察知した、小島由里に救ってもらった」

(話の順番が変だけど、なんとなく、わかった)


「つまり、裸の女性を見てしまったってこと?」

(大人かどうかわからない、の確認の意味)

祐君は頷いた。

「うん、見た」

春奈さん

「モデルさんだから、きれいだよね、きっと」

祐君

「そんな余裕ないよ、もみくちゃで」

真由美さん

「余裕と言うより、恐怖だよ」


朱里さんは、女子全員を見た。

「私たちも・・・襲ったかも」


祐君は、少し笑った。

「少なくとも、恐怖感はない」

「みんな、すごくきれい」


春奈さんは、真面目に分析をした。

「恐怖感の有無とか、無理やり感の有無も重要なポイントかな」

朱里さんが、祐君にピタッと寄り添う。

「それも、ほぐしたいなあと」

そのまま祐君の腕を揉んでいる。


私は、真由美さんと目を合わせた。

(そろそろ、自分の部屋に戻る、ということ)

真由美さんは、春奈さんと朱里さんに。

「祐君を頼みます、少し落ち込んでいる感があるので」


祐君は、抵抗しなかった。

大人しく、朱里さんに腕を揉まれていた。

(腕マッサージって、気持ちがいいのかな、そんなことを思った)


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