第242話 デモ販売と薬用植物

 綺麗に洗ったお皿を馬車に戻して、デモ販売で使っている小さな木皿の入った籠を持ってモニカとルイスの元へ戻る。


「ちょうど良かったわ、ありがとうウィルコ、カレン」

「サンキュー、ウィルコ、カレン」


 モニカが生姜焼き、ルイスが焼き鳥を小皿に入れて村人に配る。


「あの美味そうな匂いの肉だ!」

「さっそくいただいてみようじゃないか」

「………」

「!」

「美味い!」


「醤油や味噌を他の調味料と合わせるなんて考えたことが無かったな」

「漬けてから焼くのか…」

「肉に味が染みて美味いな」

 村人たちの常識から外れらレシピだったようだ。


「この村に足りないものは明日のデモ販売で販売するから是非来てちょうだい」

「甜菜の種子もあるが甜菜が育ちにくい気候だと思うからハチミツの採取に取り組むといいと思うぞ」

 牛若村は温暖なので甜菜もサトウキビもシュガーメープルも育ちにくいだろう。



 村人たちがうなずきながら帰って行き、この反応から予想した通り翌日のデモ販売は大盛況だった。

 今日は味噌、酒、みりん、ハチミツに豚肉を漬けた豚肉の味噌漬けを焼いたら試食も好評だった。


 販売したのはダッチオーブンや洗濯バサミ、甜菜糖やハチミツ、保存食や香辛料、チーズ、病気や寒さに強い穀物や野菜の種子、ワインなど。チーズは苦手な人が多かった。


 1番反響があったのは種子だった。収穫まで何年もかかるフルーツや胡椒、病気に強い穀物や野菜の種子がたくさん売れた。


「これは何の種子なんだい?」

 村長の孫次郎さんがハーブ類に目をとめた。

「これはハーブの種だよ。料理の風味付けや臭み消しにも使われるし病気に効果があるものもあるよ」

「詳しく聞かせてくれないか?」

 孫次郎さんがグイグイくる。


「ローズマリーは皮膚病の治療に使われることもあるよ。セージには強い殺菌効果があるので、風邪や扁桃腺炎、口内炎、歯肉炎に使われるし…それから…」

 ウィルコが1つずつ説明してゆく。長いが孫次郎さんの熱意は衰えない。


「ウィルコ君、出来るだけたくさんの薬用植物を買い取りたい。それぞれの使い方も書き残したい」

「嬉しいよ!使い方の書き起こしは僕に任せて!育て方も書き起こすよ」


 デモ販売が終わり、村人たちが帰った後もウィルコと孫次郎さんのやり取りは続いた。書き起こしはルイスとモニカと私も手伝った。


「お茶をどうぞ」

「少し休んで」

「ありがとう」

「この村は豊かだが、何か病気で困ることがあるのか?」

「特にこの村だから流行る病気はありません。ですが病気で命を落とす者はおります。私の兄も子供の頃にやまいで亡くなりました」


 孫次郎さんのお兄さんは10歳くらいで亡くなったらしい。症状を聞くと何かの感染症だったように思われる。4歳違いのお兄さんとは仲が良くて大好きだったそう。病気で弱っていくお兄さんを治療する手段が無かったことが、ずっと無念だったって。

 病気だけでなく、ちょっとした傷を悪化させて後遺症が残る場合も少なくないらしい。


 薬用植物は何にでも効果がある訳じゃ無いけど、怪我や病気の悪化を防げるといいよね。

まずは漢方薬の発展を見守りたい。



 翌日、孫次郎さんたちに見送られて牛若村を旅だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る