第20話 次の街へ

 宿のあるじのリカルドさんや商業組合の皆さんに見送られてサンタンデールを出発した。

 次に目指すのはクエンカという内陸の街だ。クエンカは鉱山の街で金属製品が特産なのだ。


 カッポカッポと馬車に揺られながら、私はタブレットでアメリカのスクールカーストについて調べている。もちろん明るい来世のシミュレーションだ。


── ゴシップガール好きだったんだよね。


『ゴシップガール』は高級住宅街アッパー・イースト・サイドが舞台のドラマだ。名門私立学校に通う富裕層の高校生の恋愛模様が面白かったんだよねえ。お金持ちのお坊ちゃんお嬢さんの世界だから、お酒もドラッグもありのパーティー三昧で、こういう生活が高校生時代に許されたら楽しくて仕方ないだろうなって思いながら観ていた。


 なになに…男子学生の頂点は通称jock(ジョック)、身体は筋肉質で高身長、最低でも6フィート(183cm)以上でスポーツ万能、容姿端麗で女子にモテモテって…これはなんだ…現実じゃなくてイケメンを攻略するゲームの登場人物だろう。

 性格はちょっと傲慢でセクシーなお色気むんむん。基本的に白人なのね、常に取り巻きを引き連れているってジャイアンかよ。差別意識が強くて口癖がFaggot(ファゴット)って性格悪いな。

 Faggotってゲイや軟弱そうな人をオカマ野郎って罵る時のスラングだよ。アメフト部の頭の弱いクオーターバックにいそうだな。


 女子学生の頂点はQueen Bee(クイーン・ビー)女王蜂ね。jock(ジョック)と付き合っていることが多い。セレブで頭が悪くて意地悪なお嬢様でチアリーディング部のヒロインみたいなケバい子か。学園の女王の地位を守るために意地悪で傲慢で強い性格…すごく嫌なカップルじゃん。


 彼らを中心とした集団はJocks(ジョックス)と呼ばれる。jock(ジョック)やQueen Bee(クイーン・ビー)が中心で、その取り巻きはside kicks(サイドキックス)と呼ばれる。jock(ジョック)やQueen Bee(クイーン・ビー)同様に容姿に優れているが、あくまでも引き立て役ね。

 さらにその下に位置するのがpleaser(プリーザー)、パシリみたいな立場かな。たかり(Please)が語源て最悪だな、jock(ジョック)やQueen Bee(クイーン・ビー)のおこぼれをたかる存在ってことか。


 jock(ジョック)やQueen Bee(クイーン・ビー)とは一線を置いた位置にいるのがpreps(プレップス)。お金持ちで文化系の坊ちゃん、お嬢ちゃんか。まだマシだな…なりたくないけど。


 スクールカーストの底辺がnerd(ナード)、陰キャのオタクか…これも嫌だな。コンピュータに詳しいのがgeek(ギーク)でガリ勉がbrain(ブレイン)ね。ビル・ゲイツのスピーチに出てきたな、『オタクには優しくしなさい。スクールカースト上位層も社会に出たらgeek(ギーク)やnerd(ナード)な上司の下で働く可能性が高いから』ってやつ。陰キャのオタクは人と付き合う努力をしないから嫌いなんだよね。


カレンはそっとタブレットの電源を落とした。


── アメリカの上位層に生まれるの、私には無理ゲーだ。

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