第244話 エビのチリソース煮

「夢中で食べてしまいました」

「美味かったな…」


「唐辛子は毒じゃないのよ。もちろん取り過ぎは良くないけど、それは塩や他の調味料も同じよ」

「そうですね」

「食べすぎるとお腹を壊す人もいるから気をつけてな。大丈夫な人は大丈夫だ」

「お腹を壊すかどうかは体質だよ」


 そのまま販売をしてダッチオーブンや洗濯バサミ、病気に強い種子などが売れた。唐辛子が美味しかったという理由で、彼らにとって未知の野菜の種が売れた。


「この赤い瓶詰めも唐辛子?」

 ケチャップの瓶を持った陳さんに質問された。

「それはケチャップだよ。トマトを煮詰めたソース」

 ウィルコが小さなスプーンで味見を差し出す。

「酸味と甘味?不思議な味ね」


「ナポリタンを作るか!」

「エビのチリソース煮も作ろうよ」

 ルイスがナポリタン、ウィルコがエビチリを作ることになった。ナポリタンはいつものレシピだ。



「エビの下拵えをちゃんとすると美味しいよ」


 エビの背わたを取って綺麗に洗って水けをとったら塩、酒、胡椒で下味をつける。

 エビに片栗粉をまぶしたらエビの表面をカリッと焼いていったん取り出す。

 お鍋に油、みじん切りのニンニク、みじん切りの生姜、豆板醤を入れてから火を付け、弱火で香りが出るまで炒める。

 鶏がらスープ、ケチャップ、塩、砂糖、酒、片栗粉を合わせたものを入れてとろみが付くまで煮込む。

 エビを戻し入れたら全体を絡めて、みじん切りの長ネギを加えて塩胡椒で味を整えて完成!


「さあどうぞ」

 試食用の小皿に取り分けて配ると今度は抵抗なく食べてくれる。


「美味しい!」

ナポリタンは若い世代に好評だった。


「エビのチリソース煮の赤い色がケチャップ?」

「そう、辛みは豆板醤。唐辛子と空豆で作った調味料だよ。さっきの麻婆豆腐にも使っているよ」


「豆板醤はどうやって作るの?」


 まず麹が必要なんだよね…麹を作るのに必要な麹菌は買うしかないから再現は無理だな。ありのままを伝えて独自の食文化を育ててもらおう。


「蒸したそら豆を潰して塩、唐辛子、麹、味噌を加えてよく混ぜてから煮沸消毒した瓶に入れて半年以上発酵させると豆板醤。でも麹が手に入らないと思うんだ」

「麹?」

「米、麦、大豆なんかの穀物に麹菌を繁殖させたものだよ。有害なカビが発生する可能性が高いから絶対に手作りしないでね」


「辛みと香りと旨味を加えれば良いんだから豆板醤にこだわる必要は無いんじゃないか?」

「そうね。辛い素材と香りと旨味で代用出来るわよ」

「とりあえず豆板醤はあるだけ販売出来るから代用品は研究してみて」


「村長は料理上手だから上手く作れるんじゃないか?」

「私たちも手伝います!」

「そうね、村の名物にしたいわね」


 陳さんは料理上手で人望ある村長さんだった。四川唐辛子や今日販売した種子を育てて美味しい野菜を作ると村人たちも張り切っている。次に訪ねる時が楽しみだな。



 いろいろ買ってもらって四川唐辛子を仕入れて安成アンチェン村を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る