第257話 気がかりだったこと

「子犬とか子狼とかって問題じゃなくて!」


「ちゃんと人型にもなれるよ、手伝うから試してみようか」

 神様に導かれてカレンは簡単に人型に変化出来た。


「そうそう上手だよ。鏡を見てごらん」


 振り返ると前世の日本人だったカレンと人型のモニカとルイスを合わせたような濃い子供がいた。


「……私だ。でもルイスとモニカの要素もあるね」 

 思わずじっと見てしまう。小さな両手で左右のほっぺを押さえたり引っ張ったりしても可愛い。我ながら可愛い。だって明らかにモニカの要素が入ってるんだもん!


「可愛いよ。小さな頃のモニカちゃんにも似てるねえ」

「ああ俺の記憶のモニカに似ている」

神様とヨルのお墨付きだ。


「それより耳が気になるよ」

「もう少し成長するまで耳と尻尾は隠せないんだよ」


── そういえば小児インフルエンザの時にモニカが言っていたな、12歳くらいになると狼の耳と尻尾を隠せるようになるって。


「それよりも問題があるよ!大人に戻して!」

「カレンたら、せっかく小さくて可愛いんだからダメよ」

「私の予定を狂わせたんだから1つくらい叶えてよ!」

小さなカレンがモニカとヨルと睨み合う。



「カレンちゃん、問題って何だい?」

「小さいとお酒を飲めないじゃん!」

「飲めるよ」


「………飲めるの?」

「神格を与えているからね。人間の基準とは違うよ」


── そっか…それなら……。


「良かったわね!」

「カレンと一緒に呑めるな」

モニカとヨルがご機嫌だ。


 視線を感じて横を見ると、耳をぺったんこのしたルイスがいた。下向きの尻尾が小さく揺れて、しょぼくれた顔で可愛いとつぶやいた。


「ルイス…」

名前を呼んだらビクッとした。


「前世でも生まれ変わってもルイスが可愛がってくれてたの覚えているよ」

「カレン…」

「願った通りに転生出来なかったことは怒ってるし、ことあるごとに言ってくから!」

私は執念深いのだ。


「ああ…」

「これからも何度も言っていくけど、とりあえず仲直りね!」

「カレン!」

ルイスの耳と尻尾がぐん!と上を向いたと思ったら爆舐めされた。


 これは堪らん!と身体を捩った勢いで子狼に変化した。


── あれ?


 楽だった。小狼で爆舐めされても嫌じゃない。


── これからは爆舐めされたら小狼になろう。



 ルイスが落ち着いて解放されたので立ち上がってブルブルした。自然とブルブル出来て自分が本当に小狼になってしまったのだと実感した。


 顔を上げると仲直りして良かったと安堵する神様とモニカとヨルがいた。



「ねえ、神様。ウィルコは?」


1番気になっていたことを聞いた。

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