第256話 カレン、鏡をみる
神様が子狼なカレンをルイスから引き剥がした。
「ほらほら、興奮し過ぎだよ」
「頑張ったのに…」
小狼なカレンが大きなお目目に涙を溜めるとルイスの身勝手さが一層引き立つ。
「カレン…良かったわ。人間のカレンも可愛いけど、お話し出来ないのがもどかしかったのよ」
モニカ狼がきゅんきゅん鳴いた。
「モニカ…」
「俺もカレンと話してみたかった」
「ヨル、はじめましては変かな?」
「今更な感じはするなあ」
クールなヨルの尻尾が勢いよく回っている。
「僕は神様。モニカちゃんとルイス君のパパだよ」
「じゃあカレンのお爺ちゃんね」
「いいねえ、お爺ちゃん!」
神様はお爺ちゃん呼びを歓迎のようだ。
「お爺ちゃんて感じじゃないよ」
神様の第一印象は少しメタボで品のある大人だった。眼鏡と上質なニットのカーディガンが似合う。
「カレンたら可愛いわ」
「ルイス君に似てるのは当然だけどモニカちゃんの小さな頃にも似てるねえ」
「そうだな、モニカに似ているな」
「本当?私に似てる?」
モニカの耳と尻尾がピコン!と上を向く。
「鏡を見たい!」
あの美人でスタイルの良いモニカに似ているとは嬉しい。ルイスへの怒りを忘れそうになるくらい嬉しい。
「あそこに姿見があるよ」
神様に促されて大きな鏡の前の方へ向かうとムクムクでふわふわでモフモフなハスキーの子犬がいた。
── 可愛い〜!柴犬もスピッツもハスキーもコーギーも大好きなんだよね。この子も可愛いなぁ、毛皮が分厚いから大きくなってもモフモフしてそう。
目の前のハスキーの子犬が激しく尻尾を振っている。
── 子犬ってニコニコしてて愛嬌あるよね。撫でさせてくれるかな。
そっと近づくと鼻先が硬いものにぶつかった。
硬いものは鏡だった。
── えっと…触ってみようかな。
思うように身体を動かそうとしたら手が少ししか動かない。どうして!?と思ったら目の前の子犬が後脚で立ち上がって鏡に前脚をついた。
── 私の手も鏡についている感覚はある。立ち上がっている感覚もある。
カレンが右を向くと子犬も右を向く。
カレンが左を向くと子犬も左を向く。
あー!っと口を開くと子犬も、あー!っとする。
── この子犬は私だ………やばい!私が可愛い!つーかモニカに似てるって犬じゃん!そりゃあ似てるよ!同じ犬種だもん!ぬか喜びさせて神様のバカ!
「私、子犬じゃん!」
涙目で振り返って神様に抗議した。
「子犬じゃなくて子狼だよ」
神様が仕方がないなって感じで訂正してきやがった。
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