第255話 ルイス、実家に帰る

 どすどすどす!

ルイスとモニカとヨルが、眠る小狼に突進する。


「カレン!」

 鼻息の荒いルイスが、すよすよ眠る小狼なカレンの顔の近くで叫ぶと、小狼が嫌そうに前脚を突き出してルイスの顔にめり込んだ。


「そういえばカレンは寝起きが悪い日がたまにあったわね」

「普段は手のかからない赤ん坊なのにな」

 モニカとヨルが他人事のように回想した。


「ほらほら無理に起こさないの」

 神様が後ろからルイス狼を抱えてカレンから引き離す。



「カレンちゃんはすぐに起きるから落ち着いて」

ルイスが神様に向き合ってお座りした。


「カレンは怪我をしたり具合が悪かったりしないのか?」

「ヨルが心配するのも無理ないけど大丈夫、眠っているだけだよ」

「そうか、カレンが健康ならいい」



「ねえパパ、カレンはどうして小狼なの?」

「そりゃあルイス君の娘だからだよ」

「セスナが墜落したんでしょう?」

「そうだよ、カントリー歌手のルイスと愛娘、2匹の愛犬全員助からなかった」


「カレンはもう一度、生まれ変わるの?」

「もう生まれ変わったよ」

「カレンの望みは地球での転生でしょう?」


「可哀想だけどカレンちゃんの希望は叶わなかったんだよ。ルイス君がことわりを曲げて無理矢理ついて行ったからね」


「父ちゃん、ちょっと待ってくれ…」

ルイスが冷や汗を垂らす。



Q. 本来ならカレンが希望した通りの条件で転生し、望んだ通りの人生を送れたのでしょうか?

A. はい、本来なら。


Q. 俺の子供に生まれることはカレンの予定にありましたか?

A. いいえ、想定外です。


Q. 今からカレンが予定通り生まれ直すことは可能ですか?

A. 不可能です。


Q. カレンは俺の子供の神狼として生きることになりますか?

A. そうなります。


Q. 前世でカレンが頑張ったことが無駄になったのでしょうか。

A. 考え方次第です。ポイントを上限まで貯めたこと、ルイス君の妨害が原因での事故死だったこと。これらの理由で人間より格の高い神狼に生まれ変われたのは考え方次第では幸運と言えなくもないかもしれません。

 …カレンちゃんが幸運だと思うかどうかは不明です。


Q. 俺が原因で望む転生が出来なかったと知ったら、俺はカレンにどつかれると思いますか?

A. ぶん殴られそうですね。



「父ちゃん、相談したい事があ…」


 ルイスが言い終わる前にモニカとヨルの声が聞こえた。

「あら、起きてたの?」

「身体におかしなところはないか?」


「……… 今の話は本当?」


ビクッとルイスの身体が飛び上がった。


「カ、カレン?」

 そろりと振り返ると不機嫌顔の小狼がルイスを睨んでいた。


「ルイスのアホー!!」

小狼がルイスの鼻先にガブリと噛み付いた。

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