第254話 世界は異物を弾く

 ルイスが操縦するセスナが墜落した。


若く才能あるミュージシャンの突然の死はアメリカでは大きなニュースとなった。

同乗していた愛娘、2匹の愛犬も助からなかった。


カントリーミュージックのファンだけでなく、幼い子供を持つ親、愛犬家など多くの市民が悲しみを共有し、SNSでルイスの代表曲のPV動画が広くシェアされ、再生された。



「ルイス君、モニカちゃん」

「父ちゃん?」

「パパ?」

ルイスもモニカも狼に戻り、実家のリビングで神様に起こされた。


「私たち眠っていたの?」

「そうじゃないよ、モニカちゃん」


「俺たちは人間界で死んで、こっちに戻されたのか?」

「ヨルが正解」


 冷静なヨルはすべてを覚えており、状況を正確に理解しているようだったがルイスとモニカはよく分かっていないようだ。


「ルイス君はことわりを曲げて勝手に転生したでしょう。世界が歪みを正したんだよ」

「セスナが墜落したのか?」

「そうだよ」

「俺は世界に弾かれたのか」

「そうだよ」


ルイスが四つ足で飛び上がった。


「カレン!父ちゃん、カレンは!?俺はカレンの父ちゃんだからカレンを1人にする訳にはいかないんだ!カレンのところに戻してくれよ!」


「カレンちゃんも一緒に弾かれてしまったよ」


ルイスとモニカとヨルが真っ青だ。

「カレンはどこにいるんだ?!」


「そこで寝てるよ」

「そこって何処?!」


ルイスとモニカとヨルが後ろ足で立ち上がって神様に縋りつく。


「そこ」

 神様が指さす方を一斉に振り替えるとハスキーの子犬っぽい小狼がクッションの上ですうすう眠っていた。

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