第44話 現状確認と自家製サルシッチャ

 魚の干物とサルシッチャとリモンチェッロを持って私たちは王都に帰ってきた。


 これから暖かくなるから南への旅はお休みして北に向かおうと思う。細々とチーズを作っている村には絶対に寄りたい。

 その前に王都で調べ物もしたいし、ここまでの実績を確認したい。


「という訳でシモンさんを夕食に招待します。メニューは何がいいかな?やっぱりこの世界の料理がいいよね」

「コシードは作るだろう?」

「そうね」

 確定なのかい。あの肉肉しい煮込み料理を本当に気に入ったんだね。

「ポルポ・アッフォガートも作ろうよ!トマトソースで新鮮なタコを煮込んだやつ」

 あとはサルシッチャや焼いた干物など、さっとつまめる物をいろいろ用意することになった。サルシッチャを手作り出来ると言ったら、作ることになったよ。


「豚ひき肉、玉ネギのみじん切り、パルメザンチーズ、ニンニクのすりおろし、オリーブオイル、バルサミコ酢、塩・胡椒とハーブを入れて粘りが出るまで混ぜる。塩の代わりにチーズを入れてるよ。ハーブは今回はバジル、ローズマリー、セージを入れます。半分はチリペッパーを入れてピリ辛にしよう」

 ルイスとモニカが大量に捏ねる、頼もしいね。ハーブはフレッシュなものを使うと風味が効いて美味しいよ。


「混ざったらひとまとめにして冷蔵庫で1時間以上休ませる。ルイスさん、モニカさん、お願いします」

 ルイスとモニカが何かしたら冷蔵庫で寝かせた状態になったらしい。神の力、凄い。


「休ませたタネをラップで包んで両端をキャンディ状に結ぶとソーセージっぽい形になった?そうしたら蒸し器に並べて蒸します。蒸し上がったら2〜3時間くらい休ませて完成!」


「これだけあれば当分の間、食べ放題だな」

「自分たちで作れるって良いわね!」

 ルイスとモニカが上機嫌だ。じゃあシモンさんを呼ぼう!



「シモンさん!いらっしゃい」

「よく来たな」

「どうぞ座って待ってて」

シモンさんを座らせて温めたお鍋をテーブルに運ぶ。

「これがあのダッチオーブンですね。ビン詰めやオイル漬けの保存方法を教えたことや地域の食料事情を改革したり食材や調理器具を近隣地域に広めたりした事で食糧自給率が33%から36%にアップしました。これからも広まっていくでしょうし時間が経てば経つほど上がりますよ、上がり方はゆっくりですが。

 王宮職員をそのまま公務員として採用し、給与や待遇を保証したのも大きいですね。社会が安定している要因だと思います。

 教会で義務教育を施す取り組みも続いていますから、教育指数は55%から57%にアップしています。合計で91%ですね」


やった!90%台にのったよ!


「犯罪奴隷の労働で作っている新しい3つの都市も予定通り進んでいるようですね」

「うん。ゴーレムに管理させてるのがいいみたい。付け入る隙が無いから」

「奴隷の管理も素晴らしいですね、肉体労働は休憩を挟んで1日6時間まで。雨の日は屋外作業をさせない。希望する奴隷には無償で教育を受けさせる」

「だって将来に希望がないと更生しないよね?建築に興味を持った犯罪奴隷もいるみたい。かなりモチベーション高く働いてくれてるみたいだよ」


 教育を受けられて、開放される時には積み立てた賃金を貰えるし、一部の犯罪を除いて犯罪歴はリセットされるから解放に向けて前向きになれる。貧しさや社会的な圧力や貴族の暴力に対抗するために止むを得ず犯罪行為に手を染めた人は更生の希望がある。

 犯罪をせずにいられない性質の人は犯罪指数がゼロにならないから犯罪奴隷のまま人生を終えるだろう。生まれながらの詐欺師とか性犯罪者とかは性癖だから治らないし、これらの犯罪歴はリセットされない。

 貴族と王族も更生の見込みはない。平民を罪悪感なく殺すからね。そういう行為を悪いと認識出来ないから社会に戻すのは無理だ。


「1年後には軽犯罪者で解放される人が出てくるよ。解放前に新しい社会について研修を設けるけど、安全な社会で人生をやり直せるって分かって欲しいな」

「犯罪を犯したと同時に自動的に犯罪奴隷として労働所に転移させられますから心配無用ですよ」


 開放奴隷には自由に移動する権利はあるけど、希望者には準備期間として街道整備とかの仕事を用意する予定だ。犯罪奴隷としてやっていた都市作りの経験を活かせるし、働きながら新しい外の生活に慣れることも出来る。

いきなり自由になって戸惑う人もいれば、すぐにも家族に会いたい人もいるだろう。誰もが安心して生きていける様にしたい。


この世界は変わったのだ。

もう弱い者が命や財産を奪われることは無い。

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