第43話 試食会

「食べながら話を聞きたいから一気に出すぞ。少しずつサーブするから気に入ったものは好きにお代わりしてくれ。鍋をテーブルの真ん中に出しておくから」


「これはボロネーゼという挽肉のソースをタリアテッレにあえた料理よ」

「オッソ・ブーコは骨のついた仔牛のすね肉をトロトロに煮込んだ料理だ」

「トリッパは牛の内臓のハチノスをトマトで柔らかくなるまで煮込んだ料理」


「サルティンボッカは薄くたたいた牛肉とセージの葉を生ハムで挟んでバターで焼いた料理、付け合わせは炒めたじゃがいも」

「カチャトーラはトマトと鶏肉を玉ねぎやニンニク、ローズマリーと一緒に柔らかく煮込んだ料理」


「トンナートは仔牛のツナソース」

「ボリート・ミストはいろいろな肉の煮込みでサルサ・ヴェルデやマスタードで食べると美味い」

「そしてこれはポテンツァで仕入れたサルシッチャだ」


「これはカレンのリクエストのサバサンド、焼いた塩サバをトーストしたパンにレタスと玉ねぎと一緒に挟んでレモンをかけてある。一口サイズにカットしてあるからね、あとこれは魚の干物を焼いたもの。干物にすると旨味が凝縮するんだ」


「正直な感想を聞かせてくれ」

私のお皿はまだ空っぽだ。全部は食べられないからね。

「私、サバサンドと干物が良い」

ルイスが取ってくれた。

「ありがと」


「いただこう、実に美味そうだ!」

パオロさん達が肉料理を食べ始めると女性たちも食べ始める。

「美味い!」

「全部美味いな…」

「俺はこの煮込み料理が特に美味いと思う」

マテオはオッソブーコが気に入ったみたい。


「サバサンドも美味しいわ…これ、市場の屋台で売ってたら買うわ」

「干物?本当に旨味が凝縮しているのね、味が濃いわ」

「私はサルシッチャが気に入ったわ」

「鶏肉の煮込みも美味しいわよ」


みんなお代わりしてる!

ルイスとモニカも満足そうだよ。干物が美味しくて私も幸せだよ。


「すっげえ美味い。これ、家で真似しようと思っても簡単には出来ないだろ?」

「うん。手間はかかってるよ。煮込み料理はずっとお鍋を見ていないとダメだしね。サルサ・ヴェルデは材料をみじん切りにするのが大変なんだよ」

ステファンの疑問に私が答える。

「わざわざ食べに来る価値があるよな、何より美味いし」


「煮込み料理は冬の限定メニューにしてもいいかもね!」

 私の発言にダニエレさんとイラリーさんがアリだなって顔をしている。


「ボロネーゼが1番減ってるな」

「美味しかったわ」

 全員が肯いた…これは定番入りだね!


「サルシッチャも美味しい」

「これはパオロたちが仕入れてくれば定期的に出せるんじゃないか?」

「こちらからはリモンチェッロと干物を持っていくと良いわ」

 ルイスとモニカがナイスな助言をしたよ。地域経済が活性化するといいね。リモンチェッロのレシピはどんどん広めて欲しい。旅は危険なものじゃ無くなってるし、どんどん経済を回してね。


 試食会は成功だった。新メニューのデビューに向けてお友達に広めてくれるって、やったね!と浮かれていたら柱の影からダニエレさんとイラリーさん、パオロさんとステファンとマテオとイラリーさんの幼馴染の女性たちをウィルコが見てる。溺愛する我が子を見るような目で見てる。


 ……みんな気づいていないよ、良かった。見た目が16〜17歳なんだから、ただの変な人に思われるだけだからね!

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