第57話 北へ
王都でチーズがブームになるのは時間の問題だろう。チーズの仕入れについてはトーマスさんにも頑張ってもらうので私たちは、さらに北の土地を回っている。
寒冷地でよく育つジャガイモの種芋を出来るだけ多くの村で販売したいのだ。ジャガイモの植え付けは春まで、それを過ぎたら次の植え付けは秋になる。
ジャガイモの植え付け時期を過ぎたら、大豆を育てるように薦めている。茹でた枝豆はビールに合うし。
麦は秋に種を撒いて収穫は夏前。私がウィルコの世界に来たのは冬、年が明けて直ぐだった。つまり私はお正月休み中にお酒の飲み過ぎで死んだのだ。── 私の情けない話はひとまず置いておいて…。
麦の栽培に関しては完全に時期を逃してしまっている。今はジャガイモなのだ。
「そんな訳で今は出来るだけ多くの村を回りたいんだ、みんなにも無理させてごめんね」
そんな事情なので転移で効率よく村々を回って種芋や家畜を売っている。野営地にも泊まらず結界でお風呂に入り、毎日ふかふかのベッドで眠っているから、あんまり無理しているように見えないけど。
「無理じゃ無いよ、この世界が平和で豊かになって僕の体調はどんどん良くなっていってるんだ」
── 確かに最近ウィルコの顔色が良い。艶々している。
「私たちは人間じゃ無いから、この程度の生活はまったく影響無しよ」
── 確かに体力が有り余ったルイスとモニカは人目がないと狼化してビュンビュン走り回って大型の猪とか狩ってるわ。
「えっと…そうなんだ……。ジャガイモの時期が過ぎたら連休を作って休もうって話だったんだけど…」
「休息が必要なのはカレンよ」
一瞬でルイスが狼化して後ろからカレンの襟を咥えて自分の腹に置いた。
「夕食も食い終わって眠くなっただろう、このまま眠っていいぞ」
私を抱き込んで丸くなったルイスが鼻先で私をつつく。
ルイスのお腹は暖かかった。
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