第165話 フリーダさんの大人買い
翌日、朝から広場でデモ販売の準備を始めると村人たちが大勢集まってくれた。
まずはダッチオーブンで調理を実演した。
「フタが密閉されるから蒸気を逃がさずに調理できて、煮込み料理がトロトロでホロホロに美味しく仕上がる」
ルイスとモニカの得意料理となった豆とソーセージの煮込み料理のコシードやシチューを作って少量ずつ配った。
「この肉はこの島で買った普通の肉だったわよね!?」
「肉が柔らかいなあ…」
「重量感あるフタは熱や水蒸気を逃さず密閉性が優れているから煮込み料理も美味しく調理できるんだ」
あちこちで繰り返してきた説明をここでも繰り返す。
隣でモニカとウィルコが塊肉、ソーセージ、ゆで卵、魚の切、チーズを燻製して、ナポリタンを作り、豚肉とチキンのハニーケチャップ焼きを作った。私は出来上がりを配る係。
「このチーズって美味いな!」
「豚肉も美味しいよ、この赤いソースが美味しい!」
デモ販売の試食は大好評だった。ハチミツとケチャップ、ハニーケチャップのタレがけっこう売れた。あとは洗濯バサミも、そこそこ売れた。いずれ買い足したい人も出てくるだろう。
1番売れたのはサラッとした手触りのリネンだった。私たち4人が雰囲気ペアルックでお揃いにしていたのが好評だった。
「ずいぶんたくさん買ってくれて嬉しいけど思い切りすぎじゃない?」
「そうだぜ、まずはお試しでどうだ?」
「予算の上限を決めて、そこから考えようよ」
村人たちが帰った後に残ったフリーダさんが大人買いしたいと交渉してきたのだが、結構な量で結構な金額なので必死に止めているところだ。
「普通、商人ならどんどん買わせるものだろう、あんたたちが止めるのはおかしくないかい?」
「だってかなりの金額になってしまうわよ」
「フリーダのところは大家族なんだよ」
私たちの会話に割って入ったのは村長さんだ。
「フリーダもフリーダの旦那も独身の長男と次男も稼いでいるから安心して買ってもらうと良い」
「…じゃあお鍋は大きいほうが良いわね」
「ああ、息子たちは食うだろう?」
「僕が取ってくるよ」
村長さんの言葉を受けて大きなお鍋を売ることにした。
「調味料は長期間の保存が難しいから一度にたくさん買いすぎない方がいいのよ」
「未開封のものは冷暗所で保管して2〜3ヶ月で使い切って、開封したものは急いで食え」
フリーダさんから家族の人数と食欲について詳しく聞き取りして適切な量を販売した。それでも沢山買ってくれたので半端はおまけした。
なんとフリーダさんは7人の息子を持つお母さんだった。『肉〜』『肉〜』とうるさいルイスが7人いる食卓を想像してクラっとした。
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