第207話 クラフトコーラ

「私は作ったことが無いんだけど、クラフトビールやクラフトコーヒーのブームの他にクラフトコーラも一部の人の間で盛り上がっていたんだ」

「これらの動画やブログはその頃の記録なんだね」

「うん。でも完全再現は難しいみたいだね」

「完全再現じゃなくてもいいんだ。いくつか試してみて、そこから僕のオリジナルのレシピを作りたいな」



「風味と色はカラメルなんだね」

「どのレシピをみても基本のスパイスはカルダモン、クローブ、シナモン、バニラ、レモンなんだね」


「オールスパイス、メースを加えているレシピもあるね」

「こっちの人はマーガオを使ってるよ、本格的だね」

「マーガオって何?」

「台湾の伝統的なスパイスでね、見た目は黒胡椒っぽいんだけど山椒のような辛味と生姜ようなの苦味とレモングラスのような香りを

合わせ持ったスパイスなんだって。お料理に使っても美味しいらしいよ。私はギフトで頂いた焼き菓子に入ってて知ったんだけどアクセントになって美味しかったよ」

「へえ!面白いね」


「こっちの人はコーラナッツを使っているね」

「コーラナッツって何?」

「アフリカの熱帯雨林に生えている木の実。元々はコーラナッツのエキスを使ってコーラが作られていたんだって」

「今は違うの?」

「そうみたい。コカインを含むコカの葉も原料だったりしたらしいし」

「それは現代では問題になっちゃうねえ」

「うん」


 オレンジ、レモン、レモングラス、生姜、砂糖、コリアンダーシード、カルダモン、八角、マーガオ、黒胡椒、ナツメグ、クローブ、バニラビーンズ、シナモン、オールスパイス、メース、コーラナッツ・パウダーを買った。

 中には入手出来ないものもあるだろうと思ったのに日本の通販で全部買えた。


「ありがとうカレン、これを組み合わせて僕のオリジナルのコーラを作るよ!」

「足りなくなったら言ってね」

 実験のように試していったらすぐに無くなりそうだ。


「ありがとう、それに僕は気づいちゃったんだ」

「何が?」


「初めてミートローフを作った時に薬用植物について話したのを覚えてる?」


もちろん覚えている。


「コーラの材料も薬用植物だよね?」


そういえばそうだ。



 薬用植物の栽培と調剤に関わる人たちは免許制にした。

 誰でも栽培と調剤の研修は無償で受けられる仕組みにしたので薬用植物、つまりハーブを家庭で栽培して体調に合わせて使ってもらえる。冷えには生姜とか、そんな程度でも知らないより知っていた方が良い。


 薬用植物の免許試験は誰でも無料で受験できて、将来的に民間で新薬を開発して製薬会社を立ち上げるのも自由とした。



「いま建設中の学術都市ツクーバで薬学や医療も研究して欲しいんだけど、コーラの研究もしてほしいなって!」


 確かにコーラを作った人は薬剤師で、初めて売り出したのは薬局だったって聞いたことがある。クイズ番組でみた。



「飲むと少し元気になるドリンクとか、消化を助けるドリンクとか、眠気覚ましに効果があるとか、そんなレシピを研究して国中に広めて欲しいんだ」


「地域によって特色を持たせても良いんじゃないかな?柑橘類が採れる南部はレモンやオレンジを効かせた夏に美味しい爽やかなドリンクとか」

「寒い北部は生姜を効かせたドリンクも良いね!」

「それはジンジャーエールだよ!」

「そうだね!でも美味しい薬があるって良いよね、医者嫌いの子供へは治療のご褒美にもなるし薬にもなるっていいよね」

「それは良いね!」

「でしょ!」



 甜菜が豊作で材料に困らなくなったら神託を下すとウィルコが大張り切りだ。

 商品名はウィルコーラだって…めたけど聞き入れてもらえなかった。

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