第206話 ちびルイスの療養

 シモンさんが帰って、ちびルイスはモニカ狼のお腹の毛皮に埋もれて眠っている。

 私とウィルコは定例ミーティングを終えたところだ。


「お昼は鳥だしで中華粥にしようか」

「お粥ならルイスも食べやすそうだね。モニカや僕たち向けに白いご飯も炊こうか」

「おかずは酢豚とかを出前しようよ」

「それならモニカにも満足してもらえそうだね」


 中華粥を作ってご飯も炊いて酢豚とカニ玉、八宝菜を出前した。


「ルイスには中華粥、濃厚な鳥だしで栄養つけてね。カニ玉もどうぞ」

「サンキュー」


 ケモ耳と尻尾付きで子供化したルイスが美味しそうに中華粥とカニ玉を食べる。これなら大丈夫そう。

 モニカは酢豚や八宝菜でモリモリ白いご飯を食べている。


「…姉ちゃん、俺も肉がいい」

「大丈夫?」

「平気!肉は美味いからな!」


それは大丈夫な理由になっていないと思う。


 試しに酢豚を取り分けてもらって酢豚の肉にかぶりつくルイス。最初は美味しそうに食べていたけれど様子がおかしい…と思ったら子狼に変化した。


「うええええ」


 子狼が吐いた。

「ルイスはお粥にしておきなさい」

 もっと抵抗するかと思ったが弱ったルイスは聞き分けが良かった。



── しばらくは食事の度に、このやりとりを繰り返しそうだな。




「ねえカレン、ルイスが元気になるまでの間にやりたいことがあるんだ」

ウィルコがキラキラしている。


「どうしたの?」

「うん、秋には砂糖が増産予定でしょ?」

「甜菜の収穫がうまくいくといいね」


「今からコーラの試作をしたいんだ!」


 テラ様にレシピをねだって断られたけど自力で再現する事を諦めていないらしい。どうせしばらく暇そうだし面白そうだな。


「甘い匂いがルイスの体調に影響しなければいいと思う」

「キッチンの換気を変えるよ」


 ウィルコの仕事は早かった。キッチンで発生した甘い匂いはすべて外に排出されるようになった。


「コーラ、再現、で検索するとこんな感じ」

 タブレットの検索結果をウィルコと一緒に眺める。


「スパイスと砂糖があれば近いものは出来そうだね」

「まったく同じとはいかないみたいだね」

「それは僕が頑張るよ!でも思ったよりも砂糖が使われているんだね」

「そうだね、甜菜がたくさん採れるといいね!」



秋の甜菜の収穫が楽しみだ。

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