第205話 腹黒シモン
「今日はモニカがルイスと一緒に眠ってください。何か様子がおかしかったら呼んでください」
シモンさんがモニカに念を押した。
「分かったわ」
人型のモニカが子狼のルイスを抱いて寝室へ戻る。
「副反応ってどんな症状?」
「人によって様々ですよ、蕁麻疹が出たりします。そうなっても注射で治るから大丈夫ですよ」
シモンさんが楽しそうに眼鏡をクイってした。嫌がるルイスに注射をうつのが楽しいらしい。
「じゃあおやすみシモン、カレン」
「おやすみウィルコ」
「おやすみなさい」
何事もなく朝を迎えた。
リビングに行くとシモンさんとウィルコがコーヒーを飲んでいた。
「おはようウィルコ」
「おはようカレン」
「シモンさんもおはよう、ルイスは大丈夫だったみたいだね」
「そうですね、もう一度くらいブスッとやってもいいかと思っていたんですがね」
── なぜかシモンさんは残念そうだった。
「2人とも朝ごはんは?」
「まだだよ、シモンは何を食べる?」
「そうですね…あれがいいです。クロックムッシュ」
クロックムッシュはルイスの好物なので頻繁に作るから材料はアイテムボックスに揃っている。
アイテムボックスから材料を取り出して、パン、ロースハム、グリュイエールチーズ、ベシャメルソースを重ねてオーブンへ。
ウィルコはカラフルなシリアル、私は鮭を焼いて和定食。
「クロックムッシュが焼けたよ」
ウィルコがオーブンから取り出してシモンさんにサーブしてくれた。
「シモンもコーヒーでいい?」
「はい、ありがとうございます」
ウィルコとシモンさんはコーヒー、私は温かい緑茶で朝ごはん、今日も美味しい。
「おはよう、いい匂いね」
モニカがちびルイスを抱いてリビングに来た。
「おはようモニカ、ルイスの具合はどう?」
「まだ熱っぽいのよ」
「俺もクロックムッシュがいい」
「こってりしているけど大丈夫?」
「大丈夫だ、食いたい」
ちびルイスに請われるまま焼いてみたが、やはり病気の胃には重たかったようだ。
人型になり、クロックムッシュを機嫌よくパクついていたルイスが子狼になった。
「おえええ……」
子狼が吐いた。
ウィルコと一緒にペットシーツで掃除したが、ちびルイスはモニカの腕に抱かれてぐったりしている。
「ルイスは回復するまで断食して白湯でも飲んでいた方がいいんじゃありませんか?」
シモンさんの意見は極端だと思う。
「姉ちゃん、肉…肉を食わせて…」
ぐったりしながら危機感を感じた子狼のルイスが太短い前脚を伸ばしてモニカに縋る。
「昨日の残りの鶏団子スープを温めてくるよ」
「すまねえウィルコ」
子狼なルイスは鶏団子スープを完食した。
「スープ美味いな、昨日よりも美味くなってるぞ」
「そう?それなら良かった」
「しばらくはお腹に優しいご飯にしようね」
「ウィルコもカレンもサンキューな」
子狼なルイスが少し元気になった。
「ねえルイスを抱っこしてもいい?」
「いいぞ」
そっと抱き上げる。ふわふわで小さくて可愛い。
「ルイスが可愛い〜!」
思わずほっぺですりすりすると、ペロって返された。
「カレンがデカいと変な感じだな」
「鼻が渇いているね、だるい?」
「ちょっとな」
モニカ狼のお腹の辺りに寝かせるとモニカ狼が大事そうに子狼なルイスを抱えて丸くなった。
「ワクチンの副反応も大丈夫そうですね。私は帰りますが何かあれば呼んでください」
「ありがとうシモン」
「シモンさん来てくれてありがとう」
「助かったよシモン」
「早く帰れ!
ちびルイスだけ態度が悪かった。
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