第208話 ウィルコーラ

 ウィルコーラの試作は順調だった。


「炭酸で割るから濃いめに作ってみたんだけど、最初のはスパイスが多かったみたいで刺激が強くて美味しいよ」


試飲させてもらった。

「美味しく出来たね!」


「2つめはスパイス控えめでレモン多め」

「これ好き!」


「これは生姜が多め」

「これも美味しいよ」


「これはスパイスを効かせたシロップをミルクティーで割ったもの」

「インドのチャイみたい!」

 意外だったけど美味しかった。スパイスの合わせ方と甘さがチャイ向きだったんだと思う。


「どれも美味しいねえ、これが健康に良いなら嬉しいよ。甘いから虫歯の原因になりそうなのは気になるかな」

「それも神託で伝えるよ」



 あれこれ試しているうちに夕方になり、ウィルコと一緒に夕飯の準備をした。

 今日はソーセージでポトフにした。ウィルコーラを試作しながら長時間かけて煮込んだので美味しくなっている。

 モニカにはアイテムボックスのハンバーグを焼いた。ちびルイスが欲しがったら大根おろしを乗せてさっぱり和風で出す予定だ。和風おろしハンバーグなら胃に重たすぎないだろう。



「モニカ、ルイス、ご飯だけど食べられそう?」

「腹減った!」


── 食欲はあるし元気だし回復は早そうなんだよね。モニカに甘えるちびルイスは激可愛げきかわなので、もっとみていたいけど怠くて辛そうなので早く良くなって欲しい。


「今日はポトフだよ」

「じっくり煮込んだから味が染みているよ」

「サンキュー。ウィルコ、カレン」


 ケモ耳と尻尾付きの小さなルイスが食べる姿は可愛い。私たちも一緒にいただく。


── 丁寧に作ったポトフは美味しい。


「味が染みていて本当に美味しいわね!」

「モニカも気に入った?」

「ええ、ハンバーグも美味しいわ」

「…姉ちゃん、俺もハンバーグを食いたい」


── 予想通りだ。

「ルイスにも新しく焼こうか」


「サンキュー、ホワイトソース掛けで頼む」

── そうきたか。


「…気分が悪くなったら、そこで食べるのを止めるんだよ」

「分かったよウィルコ」


 なんだかんだでウィルコもルイスに甘い。ささっとマッシュルームとほうれん草でこってりソースを作ってルイスに出した。


「美味そう!ウィルコは天才だな」


 元気よくハンバーグを食べるちびルイスが可愛い。しかし半分以上を食べ進めたところでルイスが止まった。


「ルイス?」

「美味しくなかった?」


ちびルイスが子狼に変化した。


「おええええ」


 子狼が吐いた。

昨日よりは食べられるようになっているが、回復までまだ時間がかかりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る