【番外編】1人で眠れるもん

 子狼として目覚めた最初の夜、人型で晩御飯だった。メインがお肉だったので飲み物は赤ワインだった。お酒付きの食事は久しぶりで嬉しかった。



── お風呂も気持ちよくて幸せだ〜


 人型でお風呂に入った。狼の耳が髪を洗う時に邪魔だけど、これは慣れるしかない。


 ドライヤーで髪を乾かして眠る準備はバッチリだ。部屋に戻ろうとしたら廊下でルイス狼が待っていた。


「ルイス?どうしたの」

「そろそろ眠るだろう?迎えに来た」


── ふっ。


「ルイス、私は大人だった記憶を取り戻したんだよ。1人で眠るよ」

「でも今は子狼だぞ」

「いやいやいや、中身は大人だから!」


 渋るルイスを振り切って自分に与えられた部屋に戻った。

 神様が用意してくれた私の部屋は北欧テイストの可愛い子供部屋だった。北欧っぽいスタイリッシュさが子供っぽさを中和してくれていて気に入った。


── ベッドもリネンも可愛いよね。今日はいろんなことがあって疲れたな。


ベッドに入って目を閉じた。

「…………」



── どうしよう、淋しい。



 これが子狼の本能なのか、居ても立っても居られない。


── いやいやいや、あんなに偉そうに啖呵をきって今さら一緒に眠ってくださいなんて言える訳がないって。



「………」


── ぜんぜん眠れないわ。



 人型のままベッドを出て神様とルイスの寝室の前まで来た。


── どうしよう、とりあえず人型だと気まずいから子狼になって…


「く、くぅーん…」

情けない声で鳴いてみた。


どたっ!

ドスドスドス…


 ドアが開いて目の前に神様とルイス狼がいた。ルイス狼が私のうなじくわえてベッドの上に運んだ。ベッドは神様とルイスの匂いがして安心できたので子狼のままゴロリと転がってへそ天になった。


「お布団あったかーい!ふかふか!」



ルイス狼と神様に挟まれて朝までぐっすり眠った。

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