【番外編】神様とパイ
「カレンちゃん、アップルパイを作って一緒に食べようよ」
神様は甘いものが大好物でちょっとメタボだ。今日もカレンを甘く誘ってくる。
「いいね!でもアップルパイだけじゃなくてミートパイも作ろうよ」
アップルパイだけじゃ甘いものを好まないルイスと一緒に食べられない。
「ミートパイもいいね!パイシートとリンゴは用意したんだけど追加で何が必要かな?」
「合挽きミンチ肉と玉ねぎと調味料と香辛料かな。アップルパイは2種類作らない?」
「どんなパイ?」
「普通のアップルパイとラムレーズン入りの2種類!」
「美味しそうだね!作ろう!」
神様と一緒にレシピを調べて必要な材料を買った。もちろんお財布は神様だ。
「まずはリンゴの準備だね、一緒に皮をむこうね」
皮をむいて芯を取り除いてくし形に切ったリンゴを、バターを溶かしたお鍋に入れて炒める。しんなりしてきたらグラニュー糖を加えて炒めて全体に馴染ませてレモン汁を加えたら蓋をして煮る。汁けが無くなってきたら火を止めて冷ます。干しぶどうはラム酒に漬けておく。
「美味しそうに煮えたね」
「そうだね、僕は煮たリンゴが大好物なんだよ。ミートパイの準備もしようか」
神様と一緒に玉ねぎをみじん切りにしたら玉ねぎで涙が出てきて狼の耳が倒れてしまった。私の倒れた耳を見て神様が大喜びだったので、またみじん切りに誘われそうだ。
フライパンに油を熱したら玉ねぎを入れてよく炒め、取り出して冷ましておく。
ボウルに合挽きミンチ肉、パン粉、卵、ウスターソース、ケチャップ、塩胡椒を入れて粘りがでるまで捏ねたら冷めた玉ねぎを加えて混ぜ合わせる。
「後はパイ型にして焼くだけだね!」
「この工程が1番楽しいよね、まずはアップルパイから仕上げようか」
解凍したパイシートを型に敷いたら煮たリンゴを並べてシナモンをふる。上にパイシートを乗せたら軽く押さえて閉じる。
片方はリンゴを並べた上にラムレーズンを散らす。上にかぶせるパイシートを網にしてラムレーズンが見えるようにした。
ミートパイはパイシートを敷いた型に捏ねた肉タネを詰める。ミートパイにかぶせるパイシートはアップルパイとは違う形にして分かるようにした。
「ミートパイ、作り過ぎじゃない?」
「そんなことないよ、ルイス君もモニカちゃんもヨルもたくさん食べるからね」
小ぶりなアップルパイ2種類が1つずつ、大きめミートパイが9個…多いよ!
私のツッコミはスルーされ、溶き卵を塗ったパイは予熱しておいたオーブンに入れられた。
焼き上がりを待つ間に後片付けをして、お茶を入れて神様とお喋りしていたら、いつの間にかオーブンの前にルイスとモニカとヨルがいた。
「焼き上がったかな」
神様がオーブンからパイを取り出すとルイスとモニカが神様にまとわりついて邪魔そうだった。早く食べたいというルイスとモニカの主張は却下され、ルイスとモニカはパイが冷めるまで神様にモフモフされた。
「そろそろかな?」
神様のゴッドハンドにより蕩けて伸びていたルイスとモニカがシュタっと立ち上がった。
ヨルと私がお茶を淹れている間に神様がアップルパイを切り分けてくれていた。予想通りミートパイは丸ごと提供されるようだ。
「美味い!」
「お肉がたっぷりね!」
「地球の肉は美味いな」
ちなみにアップルパイも食べる?という提案は丁重に断られた。
私は小さくカットしてもらったアップルパイを一口…うん美味しい。
「美味しく焼けたね」
「カレンちゃんが一緒に食べてくれるから嬉しいよ」
「そういえば父ちゃん、カレンはおれの子供になって神狼なのに俺たちと味覚が違うんじゃないか?」
「ルイス君とモニカちゃんがお肉しか食べなくて淋しいと思っていたし、カレンちゃんにとっては不本意な転生になってしまったからね、カレンちゃんの希望を聞いてみたいと思っていたんだ」
不本意な転生と言われると途端に無口になるルイス。すんって気配を消した。
「カレンちゃん、今すぐ決めなくてもいいからね。味覚とか狩猟本能とか狼寄りになりたくなったら教えて」
「うん、ありがとう」
ガツガツと生肉を食らうルイス狼が脳裏に浮かぶ…たぶん狼は選ばないと思う。
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