【番外編】みんなひどい!

「うぉーん!神様ー!」


 小さなカレン子狼が泣きながら神様に駆け寄った。


「どうしたの?」

 仕事の手を止め、執務室に飛び込んできた毛玉を受け止めた神様が小さなカレンを優しく撫でる。愛犬家の神様は、孫でもあるモフモフのカレンを溺愛しており、デレデレだ。


「またルイスが私を落っことした!」


 父性に目覚めたルイスはカレン子狼のうなじを咥えて運ぶことがある。

しかしルイスはモニカの弟だけあって天然の粗忽者だった。

 今日はカレンを咥えて運んでいる最中にモニカとヨルを見かけて『姉ちゃん!』と呼びかけてカレンは落下した。


「痛かったの?」

「痛くないけど怒ってるの!」


 ルイスが度々カレンを落っこすので神様がカレンを頑丈にしてくれたから痛くない。でも痛くなければ良いという問題ではないのだ。


「…はい。カレンちゃんを、もう少し頑丈にしてみたよ、どうかな?ルイス君はこれからもボトボトってカレンちゃんを落っことすと思うけど、これなら僕も安心だよ」


 カレンをボトボト落っことすという表現にカレンの表情が嫌そうに歪む。モニカとルイスの父親だけあって神様もアレだった。



「……っていうことがあったんだよ!」

 カレンは神様のバカ!という捨て台詞を残して神様の執務室を飛び出し、ウィルコのところに転移、愚痴を聞いてもらっていた。


「父さんって、ちょっとズレてるんだよね」

「ウィルコは分かってくれる?私を頑丈にするんじゃなくてルイスが私を落っことさないようにして欲しいんだ」


 しかしルイスの天然を愛する神様はルイスを修正してはくれなかった。うっかりを治したらルイスの愛らしさが損なわれるという理由だった。



「カレン、やはりウィルコのところだったか」


カレンを迎えに来たのはヨルだった。


「ルイスから話を聞いた。ルイスが落ち込んでいるぞ」

 耳と尻尾を垂らすルイスの姿が脳裏に浮かぶ。


「俺がカレンを運んでやろう」

 ヨルがカレンのうなじを優しく咥えた。こうなるとカレンは動けない。


「僕も早めにルイスと仲直りした方が良いと思うよ」

 ルイスの元に帰るようウィルコがカレンを諭す。


「カレン!」

 ヨルが振り返るとモニカ狼とルイス狼がいた。

「モニカ」

 カレンを咥えたままヨルが喋った。


ぼて!


カレンが落下した。



「あ…」


「ヨルのバカー!」


 子狼なカレンがウォンウォン泣いた。



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 ご訪問ありがとうございました。


この後は不定期で小狼になったカレンのお話を投稿してまいりますので、いましばらくお付き合いいただけると幸いです。

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